CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2024-08-28
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
最低賃金の全国平均が1,054円以上に



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は最低賃金についてのコラムになります。

全国平均の目安は昨年比50円アップとなる1,054円


7月25日、厚生労働省より、最低賃金の引き上げ目安額が公表され、全国平均で昨年比50円増の1,054円となりました。本コラム作成時点では、概ね各都道府県における答申は終わっていて(岩手県と徳島県は8月下旬頃に答申予定)、関係労使からの異議申出に係る調査審議の段階ではありますが、目安額を大幅に超える引き上げが続出しており、最終的に全国平均で1,054円以上になるのは必至の状況となっています。

最低賃金は、厚生労働省で都道府県ごとの引き上げの目安額を決めた後、その目安額を元に物価等地域の実情を考慮して各都道府県にて引き上げ額を決定する仕組みですが、昨年と同様、今年も都市圏から離れた地域を中心に厚生労働省の目安額を大幅に上回る改定が相次いでいます。以下が目安額を上回る主な引き上げです。

<目安額を上回る主な引き上げ>


  • 愛媛県:目安額を9円上回る59円の引き上げ
  • 島根県:目安額を8円上回る58円の引き上げ
  • 鳥取県:目安額を7円上回る57円の引き上げ
  • 佐賀県、鹿児島県、沖縄県:目安額を6円上回る56円の引き上げ
  • 福島県、青森県、高知県、山形県、長崎県、大分県、宮崎県:目安額を5円上回る55円の引き上げ

※東京都や神奈川県、大阪府等の都市圏では目安額どおり50円の引き上げ。
※8月下旬答申予定の岩手県、徳島県も大幅な引き上げが予想されています。


本コラム作成時点では、今年の目安額と引き上げ額の最高差額は愛媛県の9円ですが、2022年が3円(岩手県他4県)、2021年が4円(島根県)、2020年が3円(青森県他8県)、2019年が3円(鹿児島県)であったことを踏まえると、昨年(佐賀県の8円)からの大幅な引き上げトレンドを感じることができると思います。このような傾向にある要因としては、物価高の全国的な波及や、労働力の流出を防ぎたい各地域の危機感等が背景にあります。

また、今年の改定により、新たに北海道、茨城県、栃木県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、広島県の最低賃金が1,000円を上回ることとなります。以下は、最低賃金が1,000円を上回る16都府県です。

<最低賃金が1,000円を上回る16都府県>


  • 東京都:1,163円(1,113円)
  • 神奈川県:1,162円(1,112円)
  • 大阪府:1,114円(1,064円)
  • 埼玉県:1,078円(1,028円)
  • 愛知県:1,077円(1,027円)
  • 千葉県:1,076円(1,026円)
  • 京都府:1,058円(1,008円)
  • 兵庫県:1,052円(1,001円)
  • 静岡県:1,034円(984円)
  • 三重県:1,023円(973円)
  • 広島県:1,020円(970円)
  • 滋賀県:1,017円(967円)
  • 北海道:1,010円(960円)
  • 茨城県:1,005円(953円)
  • 栃木県:1,004円(954円)
  • 岐阜県:1,001円(950円)

※括弧内は昨年の改定額。


ちなみに、全国で一番低い最低賃金は秋田県の951円で、その次に低いのは高知県、熊本県、宮崎県、沖縄県の952円です(岩手県と徳島県は除く)。

10月勤務分から時給の見直しが必要に


それでは新たな最低賃金はいつから適用されるのでしょうか。こちらも都道府県によってまちまちですが、多くは10月1日から適用となります(都道府県ごとに10月1日から中旬頃にかけて適用)。給与計算をご担当されている方々におかれましては、適用日以降の勤務分は新たな最低賃金以上の時給で給与計算する必要がありますのでご留意下さい。

また、給与締日が月末ではなく15日や20日である会社の場合は、給与計算区域の当初(9月中)から時給を改定するのか、給与計算区域の途中(最低賃金が適用される10月)から時給を改定するのかなども社内で認識を合わせる必要があります。加えて、改定時においては事前の従業員への説明や雇用契約の再締結などもお忘れのないようご注意下さい。

月給制の従業員も要確認


「最低賃金は時給制のアルバイトやパートだけを確認すればよい」といったお考えをお持ちの方、結構多いです。決してそのようなことはなく、最低賃金は月給制の従業員にも適用されます。

■時給の確認方法


月給制の場合における時給は以下の計算式で算出することができます。

時給=月給÷1箇月平均所定労働時間

例えば、「月給190,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」だった場合、時給は「190,000円÷160時間=1,187.5円」となります。

なお、時給を算出(最低賃金を確認)するときの「月給」とは、実際に支払われる賃金から以下の賃金等を除いたものがそれに該当します。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当


従いまして、例えば「基本給180,000円、通勤手当10,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」のようなケースでは、「190,000円÷160時間=1,187.5円」と計算するのではなく、「(190,000円-10,000円)÷160時間=1,125円」と計算します。通勤手当は除かなければなりません。除外すべき賃金を誤って計算対象としていたことによって、「実は時給が最低賃金を下回っていた」といったことがないよう計算方法には十分な注意が必要です。

■固定時間外手当の支給がある場合も要注意


手当の一部として、固定(みなし)の時間外手当や深夜手当を支給している場合は、そこもケアする必要があります。

例えば、本年10月から1,163円が適用される東京都に所在の会社において、「基本給184,000円、時間外40時間分の固定時間外手当57,500円、1箇月平均所定労働時間160時間」のような給与状況があった場合、時給は「184,000円÷160時間=1,150円」となりますので、時給ベースで1,163円以上になるよう、少なくとも基本給を「1,163円×160時間=186,080円」とする必要があります。

この時、固定時間外手当についても、時給の改定にあわせる形で「1,163円×1.25×40時間=58,150円」と改定する必要があります。固定時間外手当の改定を失念すると、将来的に「最低賃金は満たしていたものの未払い賃金が生じていた」といった事象が起こり得ます。

今回は最低賃金について書かせていただきました。
時給の改定漏れ等がないようご注意下さい。
このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。