2025-07-02
社会保険労務士 齊藤労務事務所 齊藤 拓也

「振替休日」と「代休」に関するQ&A
人事・労務
皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
お客様から様々な労務関係のご相談を頂きますが、パチンコ店や飲食業、小売業のお客様からは「振替休日」や「代休」に関するお問い合わせを頂くことが少なくありません。当日欠勤等による代替人員の休日出勤が比較的多いことが主な背景であるように見受けられます。
「振替休日とは?」、「代休とは?」といった制度に関する基本的な確認や、「半日単位や時間単位で利用できるか?」といった細かな運用に関するものまで多種多様なご相談があります。そして、往々にして、給与計算を適切にできていないケースが散見されます。
「振替休日」と「代休」は、労働基準法に直接根拠となる条文がないため、例えば労働基準監督署の調査ではそれだけを個別に確認されるようなことはありませんが、取扱いを誤っていると、労働時間の管理や給与計算に影響してくるため、適切に運用できていることに越したことはないと言えます。
今回は、多くの方々が「振替休日」や「代休」に関して疑問に思っているであろうことをQ&A形式で作成してみましたので、ご参照いただければと思います。
- Q
「振替休日」と「代休」の違いを教えてください。
- A「振替休日」とは、あらかじめ労働日と休日を振り替えることです。「あらかじめ」がポイントです。単なる労働日と休日の入れ替えですので、効果としては、元々労働日だった日が休日になって、元々休日だった日が労働日になるだけです。従って、例えば、労働日である水曜日と休日である日曜日を振り替えた場合は日曜日が労働日になりますので、日曜日に出勤しても休日出勤手当の支給は不要になります。
それに対して「代休」とは、休日出勤した後、その代わりとして労働日に休日を取得することです。
振替休日と異なり、休日に出勤していますので、その時点で休日出勤手当の支給が必要になります。その後、労働日に代休を取得した場合は、その労働日に働かなったことになりますので、本来その日に支給すべきであった給与を支給する必要がなくなります。つまり、休日出勤の後に代休を取得した時は、下記のとおり割増部分を支給すれば事足りることとなります。
1日の所定労働時間が8時間の月給制社員(時間単価1,500円と仮定)が日曜日(法定休日と仮定)に出勤して水曜日(労働日と仮定)に代休を取得した場合の給与計算
- 日曜日
- 法定休日に働いているので休日出勤手当の支給が必要になる。
1,500円×1.35×8時間=16,200円
- 水曜日
- 労働日に働かなったため欠勤控除する。
1,500円×8時間=▲12,000円
休日出勤手当として16,200円を支給する一方で12,000円を欠勤控除として処理するため、結果、割増率部分4,200円(1,500円×0.35×8時間)を支給する形になる。
- Q
インターネットで「振替休日」と「代休」の違いを調べましたが、「休日」の定義がよく分かりません。
- A通常、労働基準法では、休日は法定休日のみを指します。法定休日とは、会社が従業員に毎週少なくとも1日与えなければならない休みのことです。厚生労働省や労働基準監督署のサイトにおいて、振替休日や代休を説明する文章に休日と記載があった場合は、基本的に法定休日のみを指しているので注意しましょう。
ちなみに、よく「法定休日=日曜日」と認識されている方がいらっしゃいますが、そのようなことはありません。法定休日は会社が任意に特定することができます(特定すること自体は義務ではありませんが、休日出勤手当の計算が必要になるため、就業規則で特定するのが通常です)。
昨今は週休2日制が一般的ですが、週2日の休みの内、法定休日ではない休みのことを「所定休日」や「法定外休日」と呼びます(以降「所定休日」とします)。社会保険労務士や、勤怠システムを提供している会社等が振替休日や代休を説明するサイトを開設しているケースも見られますが、そのようなサイトでは、法定休日と所定休日のケースに分けて振替休日や代休を説明していることが多いようです。労働基準法的には「休日=法定休日」が前提になっていますので、振替休日や代休は法定休日が対象として語られることが多いものの、所定休日も振替休日や代休の対象とすることはできます。
- Q
「振替休日」は半日単位や時間単位で取得することはできますか?
- Aできません。
正確に申し上げると、労働日と法定休日を振り替える場合は、半日単位や時間単位で取得することはできません。前述のとおり、法定休日とは、会社が従業員に毎週少なくとも1日与えなければならない休みのことですが、この法定休日は丸1日(0時~24時)休ませる必要があります。つまり、半日単位や時間単位の休みは想定されていないのです。このことから、半日単位や時間単位での振替休日は不可とされています。
ただし、労働日を、法定休日ではなく所定休日と振り替える場合は、半日単位や時間単位の取得は可能です。丸1日(0時~24時)の休みはあくまで法定休日の要件に過ぎないからです。従って、例えば、法定休日を日曜日、所定休日を土曜日としている会社があった場合、労働日である水曜日の半日と、土曜日の半日を振り替えることは可能です。
また、代休に関しては、法定休日、所定休日ともに半日単位でも時間単位でも取得することは可能です。
- Q
休日に出勤した場合、「代休」は絶対に取得させないとダメですか?
- A会社のルールによります。
例えば、会社の就業規則に代休に関する規定があって、その規定で「会社は、社員が休日出勤した場合は、事後に代休を取得させる」旨が規定されていれば、代休を取得させる必要があると言えます。
一方で、就業規則に「代休を取得させることができる」や、「社員が希望した場合は、代休を取得することができる」等、代休の取得を必ずしも義務としていないルールが規定されている場合は、代休を取得させる必要はありません。また、就業規則に代休に関する規定がない、つまり、そもそも代休のルールがない場合も代休を取得させる必要はないです。
- Q
休日出勤させましたが、「代休」の取得予定はあるものの、業務上の都合で数か月間取得できていません。何か問題はありますか。
- Aまず、休日出勤は、36協定を届出していないと行うことはできませんので、その点には注意が必要と言えます。また、休日出勤は、休日出勤をした時点で休日出勤手当の支給が必要になります。「遅かれ早かれ代休を取得させるので休日出勤手当は支給していない」という事例をよく見聞きしますが、誤った対応ですので十分に注意しましょう。
休日出勤後に同じ給与計算期間内で代休を取得できていない場合は、休日出勤をした給与計算期間で休日出勤手当を支給し、その後、代休を取得した給与計算期間で代休に係る欠勤控除をすることになります。
なお、代休は法律で定められた制度ではありませんので、代休を取得できていないことに限った罰則はありませんが、会社の就業規則どおりに運用できているかは確認する必要があります。
今回は「振替休日」と「代休」に関するQ&A形式のコラムでした。
これからも、本コラムを通じて皆様へ有益な情報をお届けできればと思います。
このコラムを書いたのは

社会保険労務士 齊藤労務事務所 齊藤 拓也
千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。