CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2025-08-27
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
最低賃金の全国平均が1,118円以上に



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は最低賃金についてのコラムになります。

全国平均は昨年比63円アップとなる1,118円


8月4日、厚生労働省より、最低賃金の引き上げ目安額が公表され、全国平均で63円となりました。これは過去最大の引き上げ幅で、目安額どおりに引き上げが行われた場合は、最低賃金の全国平均は1,118円になります。

最低賃金は、厚生労働省で都道府県ごとの引き上げの目安額を決め、その目安額を元に物価等地域の実情を考慮して各都道府県にて引き上げ額を決定する仕組みです。具体的には、各都道府県の地方最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表で構成された組織)で審議した後、その審議結果を都道府県労働局長に答申し、異議の申出等を経て、最終的に都道府県労働局長が決定する流れになっています。答申後に引き上げ額が変わることはないのが通例で、実質、答申=引き上げ額の確定と言えます。

例年、8月中旬過ぎには各都道府県での答申は終わっているのですが、今年は本コラム作成時点(8月23日時点。以下同じ。)では28の都道府県ででしか答申は終わっていません(筆者調べ)。つまり、未だ地方最低賃金審議会でコンセンサスを得ることができていない地域が多く残っています。そのような地域では、目安額を上回る引き上げを望む労働者側の意見と、より目安額に近い引き上げを望む使用者側の意見の調整が難航していることが推測されます。

全都道府県の引き上げ額が明らかになっていない状況ではありますが、既に目安額を超える引き上げが見られており、全国平均で1,118円以上になるのは必至と言えます。以下が目安額を上回る主な引き上げです。

目安額を上回る主な引き上げ(8月23日時点)


  • 鳥取県:目安額を9円上回る73円の引き上げ
  • 島根県:目安額を8円上回る71円の引き上げ
  • 石川県:目安額を7円上回る70円の引き上げ
  • 茨城県、福井県:目安額を6円上回る69円の引き上げ

※東京都や神奈川県、大阪府等の都市圏では目安額どおりの引き上げ。


ちなみに、東北6県、四国4県、九州・沖縄8県に関しては、本コラム作成時点では宮城県、香川県、福岡県の3県しか答申が終わっていません。地方圏においては、最低賃金が低いことによる他の地域への労働力の流出に対して強い危機意識を有していますので、都市圏よりも審議に時間を要していると思われます。昨年の徳島県のように目安額を大幅に上回る引き上げを実施する地域があるかもしれませんので、今後の動向に注視しましょう。
なお、目安額や各都道府県での審議状況を踏まえますと、今年、全ての都道府県で最低賃金が1,000円を上回ることは確実です。

適用時期は各都道府県で異なる


それでは新たな最低賃金はいつから適用されるのでしょうか。
例年は「10月1日適用」が一般的ですが、今年は都道府県によってかなりのバラつきがあり、かつ、いつもより後ろ倒しになっています。現時点で答申が終わっている28都道府県の内、10月中適用が20都道府県(10月1日適用は栃木県のみ)、11月中適用が7県、12月中適用が1県になっています。これは、そもそも目安額が過去最大の引き上げ幅になっているにもかかわらず、そこからさらに上積みされた場合は使用者側に相応の負担が生じ得ますので、使用者側に配慮する形で適用時期を遅らせていると考えられます。

給与計算をご担当されている方々におかれましては、適用日以降の勤務分は新たな最低賃金以上の時給で給与計算する必要がありますのでご留意ください。給与計算区域の当初から時給を改定するのか、給与計算区域の途中(最低賃金が適用されるタイミング)から時給を改定するのかなども社内で認識を合わせる必要があります。加えて、改定時においては事前の従業員への説明や雇用契約の再締結などもお忘れのないようご注意ください。

月給制の従業員も要確認


「最低賃金は時給制のアルバイトやパートだけを確認すればよい」といったお考えをお持ちの方、結構多いです。決してそのようなことはなく、最低賃金は月給制の従業員にも適用されます。

■時給の確認方法


月給制の場合における時給は以下の計算式で算出することができます。

時給=月給÷1箇月平均所定労働時間

例えば、「月給200,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」だった場合、時給は「200,000円÷160時間=1,250円」となります。

なお、時給を算出(最低賃金を確認)するときの「月給」とは、実際に支払われる賃金から以下の賃金等を除いたものがそれに該当します。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当


従いまして、例えば「基本給190,000円、通勤手当10,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」のようなケースでは、「200,000円÷160時間=1,250円」と計算するのではなく、「(200,000円-10,000円)÷160時間=1,187.5円」と計算します。通勤手当は除かなければなりません。除外すべき賃金を誤って計算対象としていたことによって、「実は時給が最低賃金を下回っていた」といったことがないよう計算方法には十分な注意が必要です。

■固定時間外手当の支給がある場合も要注意


手当の一部として、固定(みなし)の時間外手当や深夜手当を支給している場合は、そこもケアする必要があります。
例えば、本年10月3日から1,226円が適用される東京都に所在の会社において、「基本給192,000円、時間外40時間分の固定時間外手当60,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」のような給与状況があった場合、時給は「192,000円÷160時間=1,200円」となりますので、時給ベースで1,226円以上になるよう、少なくとも基本給を「1,226円×160時間=196,160円」とする必要があります。この時、固定時間外手当についても、時給の改定にあわせる形で「60,000円」から「1,226円×1.25×40時間=61,300円」へ改定する必要があります。
固定時間外手当の改定を失念すると、将来的に「最低賃金は満たしていたものの未払い賃金が生じていた」といった事象が起こり得ますので注意しましょう。

今回は最低賃金について書かせていただきました。
時給の改定漏れ等がないようご注意ください。


このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。