CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2024-01-24
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
キャリアアップ助成金正社員化コースの制度改正



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は、2023年11月に制度改正されたキャリアアップ助成金正社員化コースについてのコラムになります。

キャリアアップ助成金正社員化コースは、有期雇用労働者等を正社員に転換した場合に、申請することによって受給できる助成金で、正社員転換毎に受給可能なことも相まって、比較的幅広く、中長期に活用されている助成金と言えます。今回、以下のような制度改正がありました(本コラムでは中小企業向けの制度改正のみを紹介させていただきます)。

  • 申請が2回になって、助成額が57万円から80万円に増額された。
  • 有期雇用労働者の雇用期間の要件が緩和された。
  • 正社員転換制度の規定に関する加算措置が新設された。
  • 多様な正社員制度の規定に関する加算措置の助成額が増額された。

いずれの制度改正も2023年11月29日以降の転換から適用されていますので、仮に、2023年12月1日に正社員等へ転換した従業員がいた場合は、当該転換分の申請から制度改正後のルールが適用されることとなります。

以下、それぞれの制度改正についての詳細になります。

申請が2回になって助成額が57万円から80万円に増額


従来は、「正社員転換後の6か月」が申請の対象になっていましたが、今回の制度改正によって、「正社員転換後の12か月」が申請の対象になりました。これに伴って、2回(6か月分)に分けて申請、受給する仕組みになったとともに、正社員転換一人あたりの助成額が57万円から80万円(40万円×2回)へ増額されました。

例えば、正社員転換日が2023年12月1日だった場合は、次のような形となります。

■正社員転換日


  • 2023年12月1日


■申請の対象となる正社員期間


  • 第1期:2023年12月1日から2024年5月31日までの6か月
  • 第2期:2024年6月1日から2024年11月30日までの6か月


■申請期間


  • 第1期分:正社員転換後6か月目分の給与が支給された日の翌日から2か月以内
  • 第2期分:正社員転換後12か月目分の給与が支給された日の翌日から2か月以内


仮に、給与が月末締めの翌月25日支給だった場合、申請期間は次のとおりになります。
第1期分は2024年6月26日~2024年8月26日(最終日が休日の場合、最終日は翌営業日に)
第2期分は2024年12月26日~2025年2月25日

■助成額


  • 第1期分:40万円
  • 第2期分:40万円


なお、第2期分の申請においては、第1期から第2期にかけて給与が減額されていないか、引き続き正社員の労働条件が適用されているか等がチェックされます。また、第1期分が支給要件を満たしていない場合は、第2期分も受給することはできませんので、その点も注意が必要です。

有期雇用労働者の雇用期間「3年以内」が撤廃に


これまでは、正社員転換の対象となる有期雇用労働者については、雇用期間が「6か月以上3年以内」という要件が設けられていましたが、この要件の上限「3年以内」が撤廃されました。この「3年以内」という縛りは、2018年4月1日以降の転換に係る申請から適用された追加ルールだったのですが、今回の改正により再度この縛りがなくなった形となります。

今回の改正によって、以前のように比較的長く在籍している有期雇用労働者も正社員化コースの対象とすることができるようになったわけですが、雇用期間が通算5年を超えている有期雇用労働者の正社員転換時は、助成額が40万円(20万円×2回)と通常の半額になるルールとなっているため、その点は留意が必要です。

正社員転換制度の規定に関する加算措置の新設


就業規則に正社員転換制度を新たに規定して、対象者を正社員に転換した場合に、20万円の助成を受けることができるようになりました。これから新規でキャリアアップ助成金正社員化コースに取り組む事業所にとっては有益な改正と言えるのではないでしょうか。
なお、この加算措置は、2023年11月29日以降に正社員転換した1名分に限ったものとなります。正社員転換の都度毎回20万円が助成されるものではありませんので、ご注意下さい。

多様な正社員制度の規定に関する加算措置の助成額の増額


従前の制度では、就業規則に勤務地限定・職務限定・短時間正社員転換制度を新たに規定して、対象者を該当区分の正社員に転換した場合に、9.5万円の助成を受けることができましたが、今回の改正により、助成額が9.5万円から40万円へ増額されました。大幅な増額になりましたが、多様な働き方が広まりつつある中、それらの健全な発展と、さらなる導入促進が目的と思われます。

なお、正社員転換制度の規定に関する加算措置と同様、2023年11月29日以降に転換した1名分に限ったもので、転換の都度助成されるものではありません。また、勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれか一つの規定整備とその転換のみが助成対象となります。例えば、勤務地限定正社員の規定の整備、転換という取り組みに対して助成を受けた場合は、他の区分(職務限定正社員又は短時間正社員)の規定の整備、転換という取り組みがあっても追加で助成を受けることはできません。




助成金実務に携わる者としては、キャリアアップ助成金正社員化コースの制度改正と聞くと、どうしても助成内容のダウンや支給要件の厳格化を連想してしまいますが、今回の制度改正は、助成内容の拡充に該当します。とりわけ、57万円から80万円への増額に関しては、助成金を受給するまでの期間は長くなってしまうものの、相応のインパクトがあるのではないでしょうか。

今般の改正の背景には、非正規労働や低賃金に対する国の強い問題意識があると考えられます。今後の非正規労働を取り巻く環境や、キャリアアップ助成金正社員化コースの活用状況等によっては、同助成金のさらなる拡充が予想されますので、制度改正がありましたら可能な限り本コラムにて取り上げたいと思います。


このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。