CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2025-01-22
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
【2025年4月】出生後休業支援給付金



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
本年もよろしくお願いいたします。

今回は、今年の4月から導入される出生後休業支援給付金について解説したいと思います。

出生後休業支援給付金とは


現在、育児休業給付金の支給額は育児休業前賃金の67%(育児休業給付金は育児休業開始から180日分まで67%でその後は50%。出生時育児休業給付金は67%)とされていますが、今年の4月以降、所要の要件を満たすと同賃金の13%が加算支給されます(最大で28日分)。この加算される部分を出生後休業支援給付金と言います。

育児休業給付金の支給率67%は育児休業前賃金の手取りベース(額面から社会保険料、所得税等で計約2割が控除される建付け)の8割相当とされていますが、出生後休業支援給付金として13%の支給が加算されることにより支給率は育児休業前賃金の80%になりますので、実質手取りベースの10割相当が支給されることになります。育児休業給付金の支給額には上限があること、社会保険料や住民税は現時点での給与水準を元に算出されたものではないこと等を考慮すると、必ずしも育児休業前賃金の手取りベース10割相当にはならないと考えられますが、育児休業の取得を後押しする制度であることは間違いないのではないでしょうか。

出生後休業支援給付金の支給要件


出生後休業支援給付金の導入は、共働きのバックアップ、男性の育児休業取得促進等が背景にあるため、基本的には夫婦がともに雇用保険法上の育児休業を取得した場合に、夫婦両方に対して加算支給される制度設計になっています。このようなことから、【参考1】のとおり、支給要件は、被保険者自身と被保険者の配偶者それぞれに設けられています。従って、被保険者が支給要件を満たしていても、被保険者の配偶者が支給要件を満たしていなければ、出生後休業支援給付金を受給することはできません。

しかしながら、配偶者が専業主婦(主夫)や産後休業中、被保険者自身がひとり親の場合等、そもそも配偶者が雇用保険法上の育児休業を取得できる状況にない時は、配偶者の育児休業の取得がなくても出生後休業支援給付金を受給することができるようになっています(【参考2】参照)。

【参考1】



【参考2】

出典:厚生労働省「2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します」



【参考1】だけでは支給要件はイメージしづらいと思われますので、下記に支給要件を満たす主な事例を4パターン挙げてみました。出生後休業支援給付金の利用を想定している場合は、下記事例を参照するなどし、予め自分自身の立場で支給要件を確認しておきましょう(各事例内の①と②は、【参考1】の支給要件①と②に当たります)。

【全事例の前提】


  • 子の出生予定日:10月5日
  • 子の出生日:10月1日


■事例A 被保険者:父親(母親がいる。母親が対象の子を出産している。母親も被保険者)


  1. 父親自身が10月1日から11月30日までの間に育児休業又は出生時育児休業を14日以上取得。
  2. 子の出生日の翌日において母親が産後休業中(配偶者の育児休業を要件としない場合に該当)。

■事例B 被保険者:母親(父親がいる。母親が対象の子を出産している。父親も被保険者)


  1. 母親自身が10月1日(実際は産後休業終了後)から1月25日までの間に育児休業を14日以上取得。
  2. 父親が10月1日から11月30日までの間に育児休業又は出生時育児休業を14日以上取得。

■事例C 被保険者:父親(母親がいる。母親が対象の子を出産している。母親は無職)


  1. 父親自身が10月1日から11月30日までの間に育児休業又は出生時育児休業を14日以上取得。
  2. 子の出生日の翌日において母親が無業者(配偶者の育児休業を要件としない場合に該当)。

■事例D 被保険者:母親(父親はいない。母親が対象の子を出産している。)


  1. 母親自身が10月1日(実際は産後休業終了後)から1月25日までの間に育児休業を14日以上取得。
  2. 子の出生日の翌日において父親がいない(配偶者の育児休業を要件としない場合に該当)。

支給申請


出生後休業支援給付金は原則として、育児休業給付金又は出生時育児休業給付金と併せて申請することになります。また、支給申請書では、次の3つの項目の内、いずれかへの記入が必要になっています。

配偶者の被保険者番号欄


  • 上記事例Bの被保険者が申請する場合等に記入。
  • 上記事例Aの被保険者が申請する場合はこの欄ではなく配偶者の状態欄へ記入。

配偶者の育児休業開始年月日欄


  • 配偶者が公務員である被保険者が申請する場合に記入。

配偶者の状態欄


  • 上記事例A、C、Dの被保険者が申請する場合等、「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当する時に所定の番号を記入。


なお、これら項目への記入と併せて、支給要件を満たしていることが確認できる書類の提出が必要になります。母子手帳だけの提出で済む場合もあれば、住民票や配偶者の課税証明書が必要になる場合もありますので、申請前に必ず確認しましょう。

今回は、出生後休業支援給付金についてのコラムでした。
これからも、本コラムを通じて皆様へ有益な情報をお届けできればと思います。


このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。