CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2023-04-27
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
【現役世代向け】遺族年金は誰に支給されるか



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

ご自身が死亡した場合、遺族年金(本コラムでは「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」を指します。以降同じ。)が誰に支給されるかご存知でしょうか。「配偶者や子供に支給される」とご認識されている方は多いと思いますが、「遺族基礎年金は子供がいないと支給されない」って知っていますか。「遺族厚生年金は夫と妻それぞれで年齢による制約がある」って知っていますか。

今回は遺族年金に関するコラムになりますが、現役世代の複数の家族構成(いずれの家族も生計維持関係があり、かつ、他に遺族年金の受給対象者はいないと仮定)をケースとして挙げ、夫死亡時と妻死亡時に支給される遺族年金及び受給対象者についてコメントするとともに、なぜその受給対象者になったか等について、「★ポイント」にて解説させていただきます。

受給要件、受給対象者の詳細については、コラムの最後に日本年金機構のURLを貼らせていただきますので、ご興味がある方はそちらをご確認下さい。

ケース①


  • 夫(45歳):会社員(第2号被保険者)、前年収入700万円(遺族年金の受給要件満たす)
  • 妻(45歳):パート(第3号被保険者)、前年収入100万円(遺族基礎年金の受給要件満たす)
  • 子(16歳):高校生


■ 夫が死亡した場合


  • 妻に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給される。


■ 妻が死亡した場合


  • 夫に遺族基礎年金が支給される。


★ ポイント


  • 生計維持関係がある「子のある配偶者」に該当すれば、夫が死亡した場合は妻へ、妻が死亡した場合は夫へ遺族基礎年金が支給される。
  • 遺族基礎年金の受給対象者となり得る配偶者について、以前は「子のある妻」のみが受給対象者であったが、現在(2014年4月1日以降)は「子のある夫」も受給対象者となっている。
  • なお、「生計維持関係がある」とは、「生計を同じにしている」、「前年収入(所得)が850万円(655万5千円)未満」のいずれも満たしている場合を指し、これは遺族基礎年金及び遺族厚生年金ともに共通。生計を同じにしている受給要件を満たした配偶者が死亡した場合、自身の前年収入が850万円未満であれば遺族年金を受給できることから、比較的多くの人が遺族年金の受給対象者になると言える。


ケース②


  • 夫(45歳):第2号被保険者(会社員)、前年収入700万円(遺族年金の受給要件満たす)
  • 妻(45歳):第2号被保険者(会社員)、前年収入700万円(遺族年金の受給要件満たす)
  • 子(16歳):高校生


■ 夫が死亡した場合


  • 妻に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給される。


■ 妻が死亡した場合


  • 夫に遺族基礎年金が支給される。
  • 子に遺族厚生年金が支給される。


★ ポイント


  • 遺族厚生年金の受給要件を満たしている妻が死亡した場合、その当時、子のある夫が55歳以上だったときは、夫は遺族厚生年金を受給することができるが、子のある夫が55歳未満だったとき及び年齢にかかわらず子がいないときは、その夫は遺族厚生年金を受給することはできない。
  • なお、子が遺族厚生年金の受給対象者の要件を満たしている場合は、子が遺族厚生年金を受給することができるため、遺族厚生年金の受給要件を満たす妻が死亡した当時、子のある夫が55歳未満だったときは、本ケースのように遺族基礎年金は夫が受給し、遺族厚生年金は子が受給することになる。


ケース③


  • 夫(50歳):第2号被保険者(会社員)、前年収入800万円(遺族年金の受給要件満たす)
  • 妻(50歳):第3号被保険者(パート)、前年収入100万円(遺族基礎年金の受給要件満たす)
  • 子(20歳):大学生


■ 夫が死亡した場合


  • 妻に遺族厚生年金が支給される。


■ 妻が死亡した場合


  • 支給なし。


★ ポイント


  • 遺族基礎年金は、「子のある配偶者」または「子」が受給対象者になるが、「子」の要件は「18歳になった年度の3月31日までにある子、又は20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子」であるため、この「子」に該当しなければ遺族基礎年金を受給することはできない。
  • 遺族厚生年金の受給対象者について、夫は「子のある夫(妻死亡時55歳以上)」が要件になっているが、妻には「子のある妻」という要件はないため、ケース①から⑤のとおり、妻は子の有無や子の年齢に関係なく遺族厚生年金を受給することができる。
  • なお、ケース②のように遺族厚生年金の受給対象者が「子」自身である場合は、遺族基礎年金と同様、「18歳になった年度の3月31日までにある子、又は20歳未満で障害年金の障害等級1級又は2級の状態にある子」が要件になる。


ケース④


  • 夫(35歳):第2号被保険者(会社員)、前年年収500万円(遺族年金の受給要件満たす)
  • 妻(35歳):第2号被保険者(会社員)、前年年収500万円(遺族年金の受給要件満たす)


■ 夫が死亡した場合


  • 妻に遺族厚生年金が支給される。


■ 妻が死亡した場合


  • 支給なし。


★ ポイント


  • 子がいない場合は、夫妻問わず遺族基礎年金を受給することはできない。
  • 遺族厚生年金の受給要件を満たしている夫が死亡した場合、子のない妻は夫死亡時において、自身が30歳以上だったときは遺族厚生年金を受給することができる。一方、遺族厚生年金の受給要件を満たしている妻が死亡した場合は、ケース②のとおり、子がいない夫は、年齢にかかわらず遺族厚生年金を受給することはできない。


ケース⑤


  • 夫(28歳):第2号被保険者(会社員)、前年年収400万円(遺族年金の受給要件満たす)
  • 妻(28歳):第2号被保険者(会社員)、前年年収400万円(遺族年金の受給要件満たす)


■ 夫が死亡した場合


  • 妻に遺族厚生年金が支給(5年間のみ)


■ 妻が死亡した場合


  • 支給なし


★ ポイント


  • ケース④と同様、子がいない場合は、夫妻問わず遺族基礎年金を受給することはできない。
  • 遺族厚生年金の受給要件を満たしている夫が死亡した場合、子のない妻は夫死亡時において、自身が30歳未満だったときは、遺族厚生年金を5年間のみ受給することができる



ご参考:受給要件、受給対象者等について(日本年金機構HP)


■遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)


https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html


■遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)


https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html




このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。