CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2023-03-22
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
給与のデジタル払い



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

今回は「給与のデジタル払い」についてのコラムになります。

給与のデジタル払いとは?


給与のデジタル払いとは、給与を電子マネーとして決済アプリ等に支払うことができるようになる制度で、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化等を背景に、数年前からその実用化が検討されてきました。

給与の支払いと言えば銀行口座への振込みが一般的ですが、今後は、給与の全部又は一部をデジタル払いすることができます。例えば、「給与300,000円の内、200,000円を銀行口座で受け取り、100,000円を『〇〇pay』で受け取る」などのようなことが可能となります。

給与のデジタル払いはいつ解禁?


2023年4月以降にデジタル払いが可能となります。
ただし、2023年4月1日から直ちにデジタル払いができるわけではありません。

デジタル払いの受け皿は、厚生労働省が指定する「資金移動業者」が提供する決済アプリ等である必要がありますが、この「資金移動業者」の指定を受けるための申請受付が2023年4月1日から始まり、その審査には数か月要することが見込まれています。

従って、実際に決済アプリ等で給与を受け取るには、もうしばらく時間がかかることとなります。なお、厚生労働省に「資金移動業者」として指定されると、同省ホームページの所定箇所に掲載されることとなっています。

会社は給与のデジタル払いに対応する義務がある?


会社に義務はありません。

法令上、給与のデジタル払いは「できる」規定となっていますので、デジタル払いに対応する、しないは会社の判断で差し支えありません。

仮に、従業員からデジタル払いの要望があったとしても、会社が対応しない方針であるならば、対応する必要はありません。

なお、会社は、給与のデジタル払いに対応する場合、従業員サイドと労使協定を締結した上で、あらかじめデジタル払いの対象となる従業員から同意を得る必要があります。

「同意を得ないでデジタル払いする」や、「デジタル払いの同意を強制する」ことは法令違反となりますので、十分にご注意下さい。

ビットコインで支払うこともできるようになる?


ビットコイン等の仮想通貨で支払うことはできません。また、デジタル払いのルール上、「ATM等で現金で受け取ることができる」が要件の一つとなっているため、現金化ができないポイントでの支払いも不可となっています。

言い換えると、給与としてデジタル払いできるのは、厚生労働省の指定を受けた、つまり全ての要件を実装した「資金移動業者」が提供する決済アプリ等に限られることとなります。

メリットは?デメリットは?


あくまで筆者の見解ではありますが、以下が挙げられます。

会社側


■メリット


  • 給与振込に係る手数料が安くなる可能性がある。
  • 福利厚生の拡充につながる。

■デメリット


  • デジタル払いに対応するためのシステム構築に係る費用や
    ランニングコストが生じる可能性が高い。
  • 給与、経理、総務業務の工数が増える可能性がある。


従業員側


■メリット


  • 生活スタイルに合わせた給与の受け取りができる。

■デメリット


  • これまで提供していなかった情報を直接的又は間接的に、会社や、会社経由で「資金移動業者」に提供することとなるため、有事の際には情報漏洩リスクが高まる。


今回は「給与のデジタル払い」について説明させていただきました。
2023年4月以降に短期間で爆発的に活用される可能性は低いと考えられますが、少なからずニーズは多くあるのではないでしょうか。

今後は、「資金移動業者」の指定状況や、給与計算システムの開発会社からのアナウンス、従業員からの要望等には留意した方が良いと思われます。

このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。