CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2023-02-22
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
ふるさと納税の恩恵と寄附金上限額



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

「ふるさと納税ってどんな制度?」、「どんなメリットがあるの?」と聞かれたら皆様はどのように答えますか?

  • 翌年に納めるべき住民税の前払い。
  • 寄附した年の所得税が軽減される。
  • 寄附した市区町村から返礼品がもらえる。

簡単に説明するとしたらこのような感じになると思われますが、皆様はいかがでしょうか。
今回は、意外と分からないことが多い「ふるさと納税」についてのコラムになります。

ふるさと納税の寄附金控除


ふるさと納税として寄附した場合は、「所得税」、「住民税(基本分)」、「住民税(特例分)」の順に、三段階で税金が控除される仕組みとなっています。

■ 所得税


まず「所得税」ですが、これは「所得控除」として所得税が軽減されます。
「所得控除」とは、生命保険料控除や医療費控除と同じように、所得金額から一定額を控除する方法で、所得税の計算対象となる課税所得を減らすものです。

ふるさと納税の場合、適用される「所得税の税率」が分かれば、軽減額を次の計算式で算出することができます。


(寄附金額-2千円)×所得税の税率×1.021


  • ※「寄附金額」は、ふるさと納税として寄附した額(以降同じ)
  • ※「所得税の税率」は、適用される所得税の税率部分(以降同じ)
  • ※「1.021」は、復興特別所得税(以降同じ)


■ 住民税(基本分)


次に「住民税(基本分)」ですが、こちらは「税額控除」になります。
「税額控除」は、所得から控除するのではなく、税額そのものを控除します。
控除額は次のとおり計算します。


(寄附金額-2千円)×10%


※10%は定率



■ 住民税(特例分)


最後に「住民税(特例分)」ですが、こちらは「住民税(基本分)」と同様、「税額控除」となり、控除額は次のとおり計算します。

(寄附金額-2千円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率×1.021)


上記のとおり、「住民税(基本分)」と「住民税(特例分)」はともに「税額控除」、つまり、住民税から寄附金額の一部を直接控除することになりますが、実質これは住民税の前払いで、住民税が軽減されているわけではありません。単純に、ふるさと納税として寄附した額の一部が翌年の住民税に充当されただけと言えます。冒頭で、「翌年に納めるべき住民税の前払い」とコメントしたのはこのためです。

以下の表は、上記三段階の控除方法等をまとめたものになります。

控除控除方法控除額の計算式
所得税所得控除(寄附金額-2千円)×所得税の税率×1.021
→上限額:寄附金額が総所得金額の40%
住民税(基本分)税額控除(寄附金額-2千円)×10%
→上限額:寄附金額が総所得金額の30%
住民税(特例分)税額控除(寄附金額-2千円)×(100%-10%-所得税の税率×1.021)
→上限額:税控除額が住民税所得割額の20%


なお、仮に所得税の税率20%が適用される会社員が、ふるさと納税として52,000円を寄附した場合、軽減される所得税と控除される住民税は次のとおりになります。

  1. 所得税:( 52,000円 - 2,000円 )× 20% ×1.021 = 10,210円
  2. 住民税(基本分):( 52,000円 - 2,000円 )× 10% = 5,000円
  3. 住民税(特例分):(52,000円-2,000円)×( 100% - 10% - 20% × 1.021 )= 34,790円
  4. 合計:①10,210円 + ②5,000円 + ③34,790円 = 50,000円


「寄附する額が上限を超えなければ自己負担2,000円で恩恵を受けることができる」といった表現を見聞きしたことがあるかと思いますが、仮に上記計算において、寄附金額と税控除額が表内に記載の各「上限額」に収まっていた場合には、「ふるさと納税として52,000円を寄附したものの50,000円部分で(自己負担2,000円で)所得税の還付や返礼品という形で恩恵を受けることができた」と言うことができます。

ただし、繰り返しにはなりますが、住民税の税控除額部分(②と③)については、単なる住民税の前払いにつき、住民税での恩恵はありません。

ふるさと納税の寄附金上限額の算出方法


上記表内のとおり、「所得税」、「住民税(基本分)」、「住民税(特例分)」の三段階毎に「上限額」が設けられていますが、「住民税(特例分)」の「上限額」が寄附金額の最下限となるため、「住民税(特例分)」の「控除額計算」と「上限額計算」を利用することにより、ふるさと納税の寄附金上限額を算出することができます。

具体的には、「(寄附金額-2千円)×(100%-10%-所得税の税率×1.021)」=「住民税所得割額の20%」が成立しているときに、「寄附金額=寄附金上限額」になることから、寄附金額を寄附金上限額とみなしつつ、前述の式を下記のとおり置き換えることにより、寄附金上限額を求めることができます。

寄附金上限額=
住民税所得割額×20%÷(100%-10%-所得税の税率×1.021)+2千円


ちなみに、「住民税所得割額」とは、所得額に応じて課税される住民税のことで、課税所得金額に10%を乗じて算出した額から調整控除を控除することにより計算することができます。「住民税は一律、所得の10%課税される」と言われることが多いですが、この計算がその根拠になります。

なお、通常、寄附金上限額を見積もるタイミングでは、「所得税の税率」と「住民税所得割額」は確定していないため、寄附金額を決めるにあたっては、精度を高めて見積もった上で、上限ギリギリではなく少なめの額を寄附する等の工夫が必要です。

寄附金上限額を超えて寄附することもできますが、その場合は、「寄附金額-2,000円」の全額が控除されず、自己負担額は2,000円を超えますので、ご注意下さい。

返礼品による恩恵の享受


「ふるさと納税の一番の目的は寄附した市区町村からの返礼品」と考えている方は非常に多いのではないでしょうか。

返礼品についての詳細な説明は省略しますが、昨今では、ふるさと納税として寄附することにより、最大で寄附額の30%相当の返礼品をもらうことができると言われています。

ふるさと納税による寄附は、所得税の軽減部分を除けば、ただの住民税の前払いではあるものの、30%相当の返礼品があることを考慮すると、実質は住民税の一部を30%程度軽減(節税)する効果があると言えます。

従って、ふるさと納税をやることができない理由、やってはいけない理由等がない限り、ふるさと納税はフルに活用したが方が有益な制度と考えられます。

例えば、「300,000円を住民税として納めるだけの場合」と、「300,000円の内、250,000円は住民税として納付、50,000円はふるさと納税として寄附して、所得税の軽減を受けつつ、さらに15,000円(寄附金額の30%)相当の返礼品をもらう場合」を比較したとき、
自己負担の2,000円を加味したとしても、どちらがお得なのかは一目瞭然と言えます。


今回は「ふるさと納税」について説明させていただきました。
総務省や各市区町村のHP、ふるさと納税を取り扱っている業者のサイト等では、寄附金上限額を精緻にシミュレーションできる場合がありますので、興味がある方は是非そちらもご参照してみてはいかがでしょうか。



このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。