CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2022-10-26
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
マイナンバーカードの健康保険証利用



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

昨年(2021年)10月、マイナンバーカードの健康保険証としての利用が本格的に開始となりました。現在、オンライン資格確認システムが導入された医療機関においては、事前にマイナンバーカードの健康保険証利用の登録をしておくと、マイナンバーカードが健康保険証として利用することができます(登録しないと健康保険証として利用できません)。

そして、先日報道等で公表されましたが、現行の健康保険証は2024年秋にも廃止される方向で調整が進んでおり、今後は、マイナンバーカードの健康保険証利用の登録が必須になると言えます。

それでは、マイナンバーカードを健康保険証として利用することになった場合、何が変わるのでしょうか。何かメリットがあるのでしょうか。今回のコラムでは、現時点(2022年10月)におけるマイナンバーカードの健康保険証利用の主なメリットについて書かせていただきます。


「限度額適用認定証」がなくても自己負担限度額を超える支払いが免除


限度額適用認定証とは、医療機関の窓口での支払いが高額になる場合に、自己負担額を所得に応じた限度額にするために医療機関に提出する証類です。

マイナンバーカードの健康保険証利用の登録をしていない場合、自己負担額を限度額の範囲内に抑えるためには、事前に協会けんぽ等の保険者へ限度額適用認定証の交付を申請し、実際に交付された限度額適用認定証を医療機関に提出する必要があります。

一方、健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカードを利用した場合は、限度額適用認定証の交付申請、交付及び病院への提出を経ることなく、自動的に自己負担限度額を超える支払いは免除されます。原則、自己負担限度額を超える支払いが発生しない仕組みであるため、患者サイドの事務負担はかなり軽減されると言えるのではないでしょうか。


就職や転職、引越をしても健康保険証として利用可能


マイナンバーカードの健康保険証利用を登録している場合は、マイナンバーカード自体が健康保険証の機能を有するため、ライフイベント等の環境の変化があってもマイナンバーカードを健康保険証として利用することができます。

「転職後や退職後の一定期間は手元に健康保険証がないため、一時的に病院代が10割負担になる」といった不安からも解消されます。ただし、保険者が変わる場合は、新たな保険者に対して健康保険への加入申出は必要となるため、手続きが一切不要になるわけではありません。その点は注意が必要です。

なお、2024年秋以降は現行の健康保険証は廃止になる見込みですので、その場合は、健康保険証の発行や返却といった事務手続き自体がなくなることとなります。


過去に処方された薬や特定健診等の情報閲覧が可能


マイナンバーカードの健康保険証利用を登録すると、マイナポータルという政府が運営するオンラインサービスで、過去に処方された薬や特定健診結果等の自身の体に関わる情報をいつでも確認できるようになります。

また、患者の同意があれば、医療機関もそれら情報を閲覧することができるため、患者は、過去に処方された薬等の情報を医師に口頭で説明する必要がなくなります。自身の体についての正確なデータを共有しながら診療、薬の処方が可能となることから、より自身にマッチした医療を受けることが期待できます。

初めての医療機関でも安心して診療を受けることができるのではないでしょうか。


確定申告の医療費控除が簡素化


医療費控除は、1年間に支払った医療費が家族合算で10万円を超えた場合に一定額が所得から控除される制度です。医療費控除を受けるためには、医療機関から発行された領収書の保管や1年間分の医療費の計算が不可欠であるため、相応の労力が必要と言えますが、マイナンバーカードの健康保険証利用を登録することにより、マイナポータル上で医療機関の窓口で支払った公的医療保険に係る医療費の情報を自動的に管理できます。

さらに、その情報はマイナポータルからe-Taxに連携できるため、医療費の管理から確定申告までをオンラインで完結することが可能です。

今回は「マイナンバーカードの健康保険証利用」について書かせていただきました。
2024年秋以降、現在の健康保険証が廃止となる予定ですが、会社が日本年金機構等に対して行う社会保険の事務手続きについても制度の変更が想定されます(「資格喪失証明書」や「保険証再交付申請書」等の取扱い)。

「マイナンバーカードの健康保険証利用」に関するニュース、情報については引き続きご留意下さい。

このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。