CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-10-27
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
障害者の雇用について


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は企業における障害者の雇用についてお話をさせていただきます。

※本コラム内に記載の「従業員数」や「障害者の人数」には所定のカウント方法があります。詳細は労働局、ハローワーク、顧問の社会保険労務士等にご確認下さい。

障害者を雇用する義務がある?


「企業には障害者を雇用する義務がある」と見聞きされたことがあろうかと思いますが、すべての企業にその義務があるのでしょうか。結論を申し上げますと、法定雇用率というものがありまして、それをもとに決まります。

民間企業の場合、現在(令和3年3月1日以降)の法定雇用率は2.3%とされておりますが、これは障害者を雇用するパーセンテージを指します。従業員数に対して2.3%の障害者を雇用する義務があるという考え方となりまして、従業員数が43.5人(1人÷2.3%)以上の場合は、障害者を1人以上雇用する義務があるということとなります。

なお、ここでの障害者とは以下の障害者を指します。

  • 重度身体障害者
  • 身体障害者
  • 重度知的障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

※原則「手帳」(障害者手帳等)での事実確認が必要。



障害者雇用に関する報告


■障害者雇用状況報告


従業員数43.5人以上の企業には、障害者の雇用者数を報告する義務があります。これは毎年6月1日時点の状況を報告する「障害者雇用状況報告」と呼ばれています。この報告は「高齢者雇用状況報告」とセットになっており、雇用保険被保険者数を20人から30人程度以上有する企業に対しては、5月頃に労働局から書類一式が届きます。

なお、この時期には、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届に関する書類も届きますので、手続き漏れには十分な注意が必要です。

■障害者雇用納付金申告


「障害者雇用状況報告」とは別物になりますが、従業員数が100人を超える企業には、障害者雇用納付金について申告しなければなりません。こちらは「障害者雇用納付金申告」と呼ばれる制度ですが、法定雇用率に対する障害者雇用の不足人数分を納付金という形で納付するもので、調整基礎額(1人あたりの月額)と呼ばれる単価は「50,000円」となっています。

障害者雇用納付金は、毎年前年度の4月分から3月分を申告することとなっており、例えば各月の不足数が1人だった場合は、「1人×12か月×50,000円=600,000円」となります。障害者雇用納付金は結構な額となり得ますので障害者雇用の不足数については十分に留意する必要があります。

なお、前述のとおり従業員数が100人を超える企業が義務となっていますので、「従業員数が43.5人以上から100人以下かつ障害者雇用数0人」のような企業の場合は、障害者雇用数に不足があっても申告(納付)する必要はありません。

ちなみに、「障害者雇用状況報告」は「労働局」へ、「障害者雇用納付金申告」は「高齢・障害・求職者雇用支援機構」へ報告することとなっており、それぞれ異なる報告物になります。報告期日も異なりますのでご注意下さい。

法定雇用率を満たしていないと…


■障害者雇用状況報告について


43.5人以上の企業については文字どおり法定雇用を守らなければなりません。それでは、法定雇用どおりに雇用できていなかった場合はどのようになるのでしょうか。法定雇用を満たす障害者数を直ちに雇用しなければならないのでしょうか。建付けとしては「行政指導を行う」とされており、労働局からの指導があります。

しかしながら、実はこの行政指導、原則として一定の基準にならないと行われないものなのです。以下がその基準になりますのでご参照下さい。

【行政指導(計画作成命令基準発出)】


①から③のいずれかに該当する場合

  1. ① 障害者雇用率が前年の全国平均実雇用率未満であって不足数が5人以上
  2. ② 不足数が10人以上
  3. ③ 法定雇用障害者数が3人から4人であって障害者雇用数0人


この行政指導は「障害者の雇入れに関する計画の作成命令」と言われ、企業名公表を前提とした2年間に及ぶ行政指導で、命令発出時においては該当企業の代表者が直接応対を求められるなど、かなり負担を要するものとなっています。

なお、①から③の数値を踏まえると、③がより多くの企業に該当する基準になると考えられますが、障害者雇用数の不足があっても①から③に該当しない場合は、基本的に命令が発出されることはありません。

また、6月1日時点で①から③のいずれかに該当した場合であっても、一定期間までにその事象が解消したときは、命令が発出されないこともあります。

■障害者雇用納付金申告について


従業員数100人超の企業で障害者雇用数に不足があった場合は、前述のとおり「不足数×12か月×50,000円」で算出した額を納付金として納付しなければならず、不足数が毎月複数だったときは百万単位で納付することとなります。

障害者の雇用方法


障害者雇用が初めての場合は不安も少なくないと思います。そもそも、どのように採用すれば良いのか分からないという方々も多いのではないでしょうか。以下、あくまで私個人の経験則にはなりますが、採用方法についてご紹介させていただきます。

■自社で採用


障害者雇用が初めての場合は比較的難易度が高いと言えます。障害者の雇用体制の構築、対象業務の準備、既存従業員への説明等をゼロベースから対応する必要があります。採用までに長期間要することも少なくありません。また、入社後の継続的なサポートなども不足することが想定されます。

■ハローワーク経由での採用


障害者雇用を支援する専門の部署がありますので相応のサポートを受けることができます。また、無償でアドバイスを受けながら関連する助成金の活用も視野に入れて動くこともできます。しかしながら、自社での採用と同様、採用までにはある程度中長期的なスパンでみる必要があります。

■民間業者経由での採用


ある程度の費用はかかりますが、関連する業務をほぼ全て委託することができる業者もあり、障害者雇用が不慣れの場合は有用と考えられます。人材のマッチングもスピーディーで、採用後のサポートも手厚いことが多いです。

今回は企業における障害者の雇用について書かせていただきました。
報告時期を踏まえると決してタイムリーな内容ではありませんが、(本年度の障害者雇用数に基いて)来年障害者雇用納付金を納付する可能性がある企業様におかれましては、本コラムをご参照いただき早めにご準備いただければと存じます。

このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。