CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-06-23
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
労務管理Q&A ②


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

前回に引き続き労務管理のトピックスをQ&A形式でご案内させていただきたいと思います。

Q
キャバ嬢は労働者に該当し、労働基準法が適用されるのでしょうか。
A
勤務実態によります。個人事業主(フリーランス)として取り扱われているケースが多いと思われますが、勤務実態次第では労働基準法上の労働者に該当することも考えられます。

社会人経験が長い方ですと、会社内や取引先との付き合い等で一度はキャバクラへ行かれたことがあるのではないかと思われますが、キャバクラで接客してくれる女性(以下、「キャバ嬢」)は、会社勤めの会社員や居酒屋で勤務するアルバイト等と同じように労働者に該当するのでしょうか。

そもそも労働者とは、労働基準法第9条で「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定義されています。

さすがにこの一文だけでキャバ嬢が労働者に該当するか否か判断することはできませんが、判例や労務実務においては労働者性を判断する要素として、主に「業務の依頼や指示に対する諾否」、「時間的・場所的な拘束」、「代替の可能性」、「報酬(給与)の計算、支払方法」などを考慮するとともに、「機械や設備の利用についての負担関係」、「所属、在籍の専属性」、「源泉所得税や社会保険料の控除」などを補足材料として判断するものと考えられています。

回答のとおり、一般的にはキャバ嬢は労働者ではなく個人事業主やフリーランスとして処遇されているケースが多いと思われるものの、前述の要素や材料などの実態を踏まえた結果、個人事業主やフリーランスではなく労働者に該当するといった可能性も十分にあり得ます。

例えば、キャバ嬢の求人で「時給5,000円・20時から24時まで勤務・社保完備」のようなものがあった場合は、「時間的・場所的な拘束」、「報酬(給与)の計算、支払方法」、「源泉所得税や社会保険料の控除」などの実態を踏まえて労働者か否かを判断することとなります。



Q
土曜日、日曜日が休みの会社で、土曜日に出勤したら休日出勤?時間外勤務?
A
法定休日及び所定休日の定義、考え方によります。

通常、労働基準法を前提に休日と言った場合は、「少なくとも1週間に1日の休み」のことを指し、これは法定休日と呼ばれています。この法定休日は何曜日であっても構いません。

世間一般には「土曜日、日曜日の週2日休み・法定休日は日曜日」というケースが多いと思われますが、法定休日を土曜日としても大丈夫です。「法律で法定休日は日曜日と決められている」のような認識が広く浸透している印象がありますがそのような画一的なルールはありません。

なお、法定休日ではない休みを所定休日や法定外休日などと呼びます。

ところで「時間外労働休日労働に関する協定(36協定)」には「休日労働」について記載することとなっていますが、前述のとおり労働基準法においては原則「休日=法定休日」を前提としていますので、そこでは「法定休日の労働」を指していることとなります。

従って「土曜日を所定休日、日曜日を法定休日」と取り決めている会社の場合は、日曜日の労働のことだけを記載すれば事足りるわけで、所定休日である土曜日の労働について記載する必要はありません(所定休日の記載は任意項目になっています)。

さて、設問の件になりますが、仮に日曜日が法定休日だった場合、所定休日である土曜日の出勤は所定時間外出勤となります。

「法定休日ではないので休日出勤には該当しない」→「所定時間(月曜日~金曜日)以外の出勤」→「所定時間外出勤」のようなロジックがわかりやすいかもしれません。

なお、当該出勤に対する給与計算については、土曜日は法定休日ではないため休日労働割増35%は適用しないものの、土曜日の出勤部分が週の法定労働時間(原則40時間)を超えた場合は時間外割増25%を適用する必要があります。

実務上、所定休日の勤務に対しては週の法定労働時間数にかかわらず、「休日出勤手当」などのような名称として一律25%割増で計算、支給しているケースも少なくありませんが、法定休日と所定休日を一律に広義の意味で休日と称しているだけで、概念的には休日の出勤ではなく所定時間外の出勤となります。



Q
繁忙日で休憩を付与できないため、その休憩時間分に相当する手当(休憩時間×時間単価)を支給すれば休憩を付与しなくても問題ないでしょうか。
A
労働基準法で定める休憩は必ず付与しなければなりません。

「労働基準法で定める休憩」は次のとおりです。

  • 労働時間が6時間超8時間以下:少なくとも休憩45分付与
  • 労働時間が8時間超:少なくとも休憩1時間付与

従って、設問のように「働いた時間分の給与を支給さえしていれば休憩を与えなくても問題ない」のような考え方は適切ではありませんのでご注意下さい。

なお、例えば「所定労働時間5時間(拘束5時間30分)・休憩30分付与」のような雇用契約の場合、上記の労働基準法で定める休憩を必要としない労働時間、つまり、そもそも休憩を付与しなくてもよい労働時間となりますので、仮に繁忙等によって30分の休憩を付与せずその時間に勤務を命じ、その勤務の対償として「30分×時間単価」を手当として支給することについては何ら問題ありません。

ただし、所定外の勤務を命じる可能性があることについて、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則にその旨の記述が必要であるとともに、「時間外労働休日労働に関する協定(36協定)」の締結、届出が必要であること等も大前提となりますので、その点もご留意下さい。


このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。