CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-06-16
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝
パチンコホールのM&A(2)


パチンコホールM&Aの流れ


パチンコホールM&Aの一般的な流れは以下の通りとなります。

【初期検討から基本合意まで】


  1. ① 概要書などの打診
  2. ② 秘密保持契約書の締結
  3. ③ 企業概要書及び基本資料による1次検討
  4. ④ 意向表明書の提出
  5. ⑤ 基本合意


【基本合意からクロージングまで】


  1. ⑥ 買収精査(DD)
  2. ⑦ 意向表明(最終)の提出
  3. ⑧ 最終契約
  4. ⑨ クロージング手続(会社分割・分割承認申請等)
  5. ⑩ クロージング(決済・登記)


〇 基本合意と法的義務の関係


M&Aは、大きくは基本合意までと基本合意後に分ける事が出来ますが、基本合意とは、売主と買主で基本的な合意事項(譲渡対象・譲渡金額・従業員・スケジュール等)を書面で確認するためのもので法的義務はありません。

法的義務が発生するのはその後の最終契約となりますが、法的義務が発生しない理由は、買主が基本合意までに得る情報が一部に制限されている(「情報の非対称性」が存在)することから法的義務はないとされています。

他方、法的義務が発生することとして「秘密保持」が挙げられます。また、基本合意において「独占交渉権の付与」が記載されている場合は、他社と水面下で交渉を進めることは民法における信義則の原則に違反する行為として相手方より損害賠償請求や取消無効の請求を受ける可能性があることから注意が必要です。

併せて、基本合意における合意事項は、その後の合理的理由のない変更や一方的な中止があった場合も同様に請求を受ける可能性がありますので、法的義務はありませんが基本合意に記す合意内容について注意が必要です。

〇 情報開示の進め方


情報開示の進め方として、基本合意前と基本合意後で違いがあります。基本合意前は買主による1次検討として、基本情報の提供が目的となります。

パチンコホールで言えば、不動産(賃貸借契約を含む)や固定資産(リース契約を含む)に関する情報、売上と営業利益に関する情報、従業員に関する情報(個人情報を除く)などが主な対象となります。

他方、機種別稼働や就業規則、契約書などの秘匿性が高い情報は、基本合意後の買収精査(DD)で開示するのが一般的です。なお、買収精査(DD)では、買主からの開示要請のあった情報は原則開示することが売主に求められるため、基本合意締結の重要性がお分かり頂けたかと思います。

〇 情報漏洩防止の進め方


売主にとって懸念となるのが、売却情報が出回ることが挙げられます。また、情報漏洩の元をたどると、次の3つを挙げることが出来ます。

  • 持ち込んだ相手からの漏洩
  • アドバイザーや銀行からの漏洩
  • 社内からの漏洩


情報漏洩の元を特定させるのは現実的に難しいところがありますが、意外に多いのが銀行です。M&Aを銀行に相談されるケースは多いのですが、銀行から五月雨式に情報が流れてある日突然「会社を売る話を聞きましたが・・・」といった電話があるケースもあります。

また、社内から外部に情報が洩れるケースもあります。

検討中の買手がある日突然「会社を買う話を聞きましたが・・・」といった電話があったため検討を白紙に戻したケースもあります。

よって、M&Aの情報の取扱いを心得ているアドバイザーや買主候補を慎重に選定する必要があると言えます。

次回は、基本合意後のポイントについてお届けをさせていただきます。どうぞ、引き続き、宜しくお願い致します(了)。


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船井総研 金融・M&A支援部

<お問合せ先> thirano@funaisoken.co.jp
<HP>   https://funai-ma.com/


このコラムを書いたのは
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝

2004年 船井総合研究所中途入社。パチンコ、建設、不動産などの事業再生を中心に再生支援実績は50件を超す。M&Aでは法的手続など中規模以上のアドバイザリー業務から小規模の事業整理まで幅広く対応。経営戦略、ファイナンス、M&Aなどの成長支援に取り組む。一般社団法人日本ターンアラウンドマネジメント協会 準会員 事業再生士補。パチンコ歴30年。
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