CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2024-07-24
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
今後の雇用保険関係の主な制度改正



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

今回は、今後の雇用保険関係の主な制度改正(5月と6月に改正法が可決、成立)についてご紹介したいと思います。

【2025年4月施行】自己都合退職の給付制限期間が2か月から1か月に


現状、自己都合を理由に退職した場合、失業給付を受給するには原則2か月(5年間の内、自己都合退職が2回を超えた場合は3か月)の給付制限期間がありますが、2025年4月以降、これが原則1か月(5年間の取扱いは現行と同様)に短縮されることとなりました。

これまで、労働者が安心して転職活動を行えるようにする等の観点から、給付制限期間の見直しが議論されてきましたが、2025年4月からは、退職後や退職前1年以内に自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限期間が解除されることとなりました。給付制限期間の2か月から1か月への短縮はこの制度改正に伴う形で行われたものになります。

従来、自己都合退職時の給付制限期間は3か月でしたが、2020年10月から2か月に短縮され、ほとんど間隔を空けることなく再度2025年4月から1か月に短縮されること、つまり、失業給付がさらに受給しやすくなることを踏まえると、労働力の流動性や活性化に対して国が強い問題意識を持っていることを窺い知ることができます。

【2025年4月施行】育児休業関係の新たな給付の創設


■出生後休業支援給付


現在、育児休業給付金の支給額は育児休業前賃金の67%(育児休業開始から180日まで67%。その後は50%)とされていますが、2025年4月以降、条件を満たすと「出生後休業支援給付」としてさらに同賃金の13%が支給されることになりました。

支給率67%は育児休業前賃金の手取りベース(額面から社会保険料、所得税等で計約2割が控除される建付け)の8割相当とされていますが、13%の支給が加算されることによって支給率は育児休業前賃金の80%になりますので、実質手取りベースの10割相当が保障されることになります。育児休業給付金の支給額には上限があるため、育児休業前賃金が高額だった場合は必ずしも手取りベースの10割相当保障にはならないものの、育児休業の取得を後押しする制度改正であることは間違いないのではないでしょうか。

なお、前述の条件とは、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者と配偶者がともに14日以上の育児休業を取得することです。「出生後休業支援給付」は最大28日分が支給される制度になっていますので、産後パパ育休の活用等も相まって、2025年4月以降は男性のさらなる育児休業の取得が期待されます。

ちなみに配偶者が専業主婦(主夫)やフリーランスの場合、もしくはひとり親家庭の場合等、そもそも配偶者が雇用保険法上の育児休業を取得できる状況にない時は、配偶者の14日以上の育児休業の取得がなくても「出生後休業支援給付」を受給することができるようになっています。

■育児時短就業給付


被保険者が2歳未満の子を養育のために時短勤務している場合に、「育児時短就業給付」として時短勤務中に支給される賃金の10%が支給されることになりました。時短勤務によって減額されている賃金の一部を国が補填してくれるようなイメージです。なお、時短勤務中の賃金と「育児時短就業給付」の合計が時短勤務前の賃金を上回ることがないよう10%部分には調整が入る制度設計になっていますので、無条件に時短勤務中の賃金の10%が支給されるものではありません。

【2028年10月施行】雇用保険の適用拡大


雇用保険の加入基準の一つに「週の所定労働時間20時間以上」がありますが、2028年10月以降、これが「週の所定労働時間10時間以上」に引き下げられることとなりました。昨今の働き方の多様化により、従来の枠組みではカバーできない労働者の存在が懸念されたこと等から、雇用保険の加入の間口を広げた形となります。

加入基準が「週の所定労働時間10時間以上」になることに伴い、被保険者期間をカウントする際の賃金支払基礎日数の11日から6日への変更や、賃金日額の下限が変わる等の見直しは入りますが、新たに適用になる被保険者も含めた全ての被保険者が同じルールの中で失業給付や育児休業給付金等を受給することができるようになりますので、現在雇用保険に未加入のアルバイトやパートにとっては有益な制度改正と言えます。

2028年10月施行とやや先の制度改正ではあるものの、多くの労働者が新たに適用対象になることが想定されますので、各企業におかれては早い段階から雇用保険への加入、雇用保険料の徴収等について全社的に周知しておくことが望ましいと考えられます。




今回は、今後の雇用保険関係の主な制度改正についてのコラムでした。
これからも、本コラムを通じて皆様へ有益な情報をお届けできればと思います。
このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。