CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2024-05-22
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
定額減税のQ&A



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は定額減税に関するQ&Aになります。
定額減税の事務については前回のコラムで説明させていただきましたが、今回は、これまでにお聞きした定額減税に関する疑問や質問等をQ&A形式にまとめてみました。

Q1


Q
私(会社員Xさん)にはパート勤務の妻(同一生計配偶者。勤務先で甲欄適用)がいますが、妻の勤務先では、妻の定額減税はどのように処理されるのでしょうか。

私が私自身の給与で妻分の減税を受けつつ、妻も妻自身の給与で減税を受けるような重複はあり得るのでしょうか。
A
Xさんの奥様がXさんの同一生計配偶者であっても、令和6年6月1日時点でパート先に在籍していた場合は、当該勤務先にて月次減税の対象になります。つまり、Xさんの奥様にも月次減税額3万円が設定され、6月以降の給与で月次減税する準備はなされます。

しかしながら、所得額が48万円以下の場合は、毎月の給与で所得税が発生することはほぼないため、月次減税額は設けられるものの6月以降の給与で月次減税される可能性は低いと言えます。仮に、一時的な給与増によって所得税が発生した場合はその月の給与で月次減税されますが、本来、この月次減税された部分は年末調整で還付される所得税に当たります(所得額48万円以下の場合、給与で暫定的に所得税を徴収されていたときは年末調整により全額が還付されます)。つまり、定額減税によって減税されたのではなく、単に所得税の還付が早まったような形です。

従って、Xさんの奥様がXさんの同一生計配偶者である限り、奥様自身の給与(年末調整)で減税される余地はないため、XさんとXさんの奥様が重複して減税を受けるようなことは起こりません。

Q2


Q
私(会社員Xさん)にはパート勤務の妻(勤務先で甲欄適用)がいます。妻の令和6年中の所得額は、令和6年6月給与前時点で48万円以下になる見込みにつき、私の給与内で妻の分の定額減税も受ける予定ですが、今後、所得額が増える可能性があるとのことです。

結果的に妻の令和6年中の所得額が48万円超になった場合はどうなるのでしょうか。
A
Xさんは6月以降の給与及び賞与にて、自身分の3万円と奥様分の3万円の計6万円の定額減税を受けることになりますが、仮に、給与増や転職により奥様の令和6年分の所得額が48万円超になった場合は、奥様はXさんの同一生計配偶者に該当しなくなるため、Xさんが奥様分の定額減税を受けることはできなくなります。

結論としては、Xさんは年末調整で奥様分の減税3万円を返還することとなります。

なお、Xさんが奥様分の定額減税を受けることができなくなる一方で、Xさんの奥様は、自身の給与(年末調整)で自身分の定額減税を受けることとなりますので、XさんとXさんの奥様という家計単位で見た場合、奥様が同一生計配偶者から外れても損得は発生しません。

Q3


Q
所得税が少ない場合や、扶養親族が多い場合は定額減税分を控除できないと思いますが、そのような場合は給付金が支給されると聞きました。本当でしょうか。
A
はい、給付金が支給されます。

給付されるタイミングは2回設けられており、1回目は令和6年夏頃以降になります。このタイミングでは、令和6年分の推計所得税額(令和5年分の所得税額)と令和6年度分住民税の所得割額を踏まえ、令和6年において定額減税分を全額控除できない可能性がある方に対して、所定の方法で計算した額が給付されることとなっています。

2回目は令和7年中を予定しており、このタイミングでは、実際に控除できなかった定額減税分が給付されることとなっています。

ちなみに、給付は万円単位で行う取り扱いになっているため、控除できないであろう(実際に控除できなかった)額の千円単位を切り上げた額が給付額になります。例えば、定額減税120,000円の場合に55,000円しか減税できないケースでは残りの65,000円が給付対象となりますが、65,000円の千円単位を切り上げて70,000円が支給される形となります。

なお、給付金の事務全般は市区町村が行うこととなっており、原則、給付対象者に対しては市区町村から連絡がありますので、その応対漏れや申請漏れ等がないよう注意が必要です(市区町村によって対応方法が異なりますのでお住いの市区町村にてご確認下さい)。

Q4


Q
定額減税は、6月以降の給与及び賞与でも処理をし、改めて年末調整でも処理をすると聞きました。年末調整ではどのような処理がされるのでしょうか。
A
下記が令和6年の年末調整の手順イメージになります。

イメージしやすいよう税額、減税額等を例示していますが、あくまで説明のための便宜的な数字であり、所得額や税率は一切考慮していません。また、復興特別所得税の計算は省略しています。

①給与及び賞与で天引きされた所得税(月次減税処理後の所得税)を集計 例150,000円
②確定した所得額で所得税を計算 例140,000円
③年調減税額の確認 例30,000円
④年調減税を反映した所得税(②-③)を計算 例110,000円
⑤①と④の差額を還付又は徴収 例40,000円還付

月次減税は6月以降の給与及び賞与で処理しますが、年末調整では年調減税という形で年間の税額に対して定額減税を反映させます(④)。6月以降の給与及び賞与で減税すると認識しがちですが、年調減税こそが本来の減税に当たります。

給与でも減税、年末調整でも減税とやや分かりづらい事務処理にはなりますが、「月次減税は手取りを増やすためだけのもので所得税の計算には一切関係のない処理」、「年調減税は税額を計算するための処理」という認識で差し支えないです。

Q5


Q
「6月以降の給与及び賞与の月次減税は意味がない」、「年末調整で処理すれば問題ない」と聞きました。どういうことでしょうか。
A
今年に限ったことではありませんが、所得税は年間の所得額で算出しますので、所得税の算出にあたっては、月次減税額の処理自体には何ら意味がないと言えます。

A4でも説明しましたが、月次減税はあくまで6月以降の給与及び賞与の手取り額を増やすための処理に過ぎません。

従って、極端な話、月次減税がどのような処理になったとしても年調減税の処理によって然るべき税額が計算されることとなります。
なお、A2で、「3万円返還することになる」と説明しましたが、Q2のケースをA4のイメージに当てはめた場合、①では6万円の減税が反映されているものの、奥様が同一生計配偶者から外れたことによって、③が6万円ではなく3万円となり、④では3万円しか控除できなくなるため、3万円分税額が多くなる(月次減税していた3万円を返還する)ということになります。

Q6


Q
私の令和5年分の給与所得は900万円で、妻は無職でしたので、私の令和6年度分の住民税は自身分の1万円と妻分の1万円の計2万円が減税されていました。

また、私の令和6年分の給与所得は1,500万円になる見込みで、妻は引き続き無職です。このような場合、令和7年度分の住民税でも妻分の1万円の減税を受けることができると聞きました。2年も減税を受けることができるのでしょうか。
A
はい、ご質問のケースでは令和7年度分の住民税でも減税を受けることができます。
制度上、令和6年度分の住民税では「控除対象配偶者(納税者本人の所得額が1,000万円以下、かつ、配偶者自身の所得額が48万円以下である配偶者)」が定額減税の対象になっていて、令和7年度分の住民税では「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者(納税者本人の所得額が1,000万円超、かつ、配偶者自身の所得額が48万円以下である配偶者)」が定額減税の対象になっているからです。

このような制度設計になっている理由は、令和6年度分の住民税の情報(令和5年分の給与支払報告や確定申告の情報)では全ての同一生計配偶者を捕捉することができないため、とされています。

給与計算業務や年末調整業務に関与していないとやや理解しづらい部分ではありますが、「自身の所得額が令和5年分は1,000万円以下、令和6年分は1,000万円超に該当する場合で、いずれの年でも同一生計配偶者を有する人」が令和6年度分及び令和7年度分の住民税で配偶者分の減税を受けることができると覚えておけば十分かと思います。


今回は、定額減税をQ&A形式で説明させていただきました。
これからも、本コラムを通じて皆様へ有益な情報をお届けできればと思います。


このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。