2023-05-10
株式会社THINX代表取締役 𠮷元 一夢
スマパチの本格化 ~機械学習を使用した未来予測~
業界情報
"スマパチの本格化" の火付け役として白羽の矢が立ったのは、『eぱちんこ新必殺仕置人 激闘K6』(以下、『仕置人』とする)だろう。しかし、導入直後のデータからは不穏なサインが示唆されていた。本稿では、どのあたりに不穏さがあったのか、また本機から得られたいくつかのインサイトについて論じると共に、機械学習を使用して今後の市場動向を予測してみたいと思う。
仕置人のポテンシャル
まずは、『仕置人』のポテンシャルを「偏差値分析」から明らかにすることとする。「偏差値分析」の解説については 前号 で書き記したので割愛する。以下に「偏差値分析」の結果をまとめた。
図1:【偏差値分析】 ©THINX-LAB.OLAP sis ©SUNTAC「TRYSEM」よりデータ引用
導入直後のインサイトは、厳しいと言わざるを得ない結果が示唆されていた。「遊びかたの質」を表す「1人あたりアウト」、「遊技時間」、「60分以上遊技者割合」の偏差値は40近くの値となり、プレイヤーは遊びにくさを感じていることが露わとなった。また、「勝ちの魅力」を表す各項目から「勝ち金額」に特化した機種であることが示されたが、遊技した結果プレイヤーが体験することとなる褒美の値(Rv)は偏差値50となり、いたって平凡な値となった。
大きな期待を集めていただけに、落胆の色を隠せないところだろう。しかしながら、導入直後の打込み(アウト)は良好な推移を見せていたこともあって、「偏差値分析」の結果と紐づかないと感じられる読者の方もいるかと思うので、稼働の中身を分解し、なぜ高い打込み数を示したのか分析を進めることとする。
遊技人数に起因し稼働を構成させる仕置人
稼働(アウト)の中身を知る上で以下の構造式の理解は必須となる。
図解1:【アウトの構造式】
上記、構造式にあてはめると、導入当初の『仕置人』の打込み数が高い値を示した理由がわかりやすくなる。先述した「偏差値分析」からわかるように、本機の「遊びかたの質」は極端に低かった。つまり、魅力的に感じる体験はできず、粘らないプレイヤーで大半を占めていたこととなる。しかし、こうしたことが示唆される一方で、初週の稼働平均は高い値を示した。なぜ、そのような結果になったのかというと、それは「遊技人数」のボリュームによって稼働を構成させていたことが構造式にあてはめると理解できる。
したがって、『仕置人』から得られたインサイトのひとつとして、導入後の遊技機を評価する上では、アウトという結果の値だけを切り取り判断するだけではなく、「遊びかたの質」からプレイヤーの心理的な部分を読み解くことが重要であると言えるのではないだろうか。
参考までに、以下に「台あたり遊技人数」を図示しておく。
図2:【台あたり遊技人数】 ©THINX-LAB.OLAP sis ©SUNTAC「TRYSEM」よりデータ引用
機械学習から未来予測
最後に、機械学習を使用して高レート市場の今後について予測してみることとする。以下に、高レート市場の週次系列の推移をまとめた。
図3:【高レート市場:週次系列】 ©THINX-LAB.OLAP sis ©SUNTAC「TRYSEM」よりデータ引用
上図は、『4円パチンコ集団』(以下、『4円集団』とする)と『20円パチスロ集団』(以下、『20円集団』とする)の「延べ遊技者割合」の推移を表した図となる。
好調の『20円集団』は、『Lパチスロ北斗の拳AD XR』の登場にあわせ規模が一気に増加している。対して『4円集団』の規模は、一気に下降した。そんな状況下においての『仕置人』のリリースは、逆風が吹き荒れる中のタイミングだったこともマイナスに影響したのかもしれない。
さて、ご覧のとおり現在の『4円集団』の規模は、2021年から起算して最も規模の小さい集団となった。この規模が、7月末時点でどれほどの数値になる可能性があるのか、機械学習を使用してグラフィカルに表現したので確認しておくこととする。
オレンジ色のバンド(上限/下限を示した範囲)で表現されている箇所が予測範囲となる。7月末時点の『4円集団』の規模の下限値は40%を下回り、39.11%にまで縮小する可能性があることが示唆されており、これまで以上にパチンコ市場は厳しい環境になるかもしれない。
お盆商戦の舵取りの参考になれば幸いである。
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株式会社THINX代表取締役 𠮷元 一夢
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役
データアナリスト・統計士
1986年生まれ。文部科学省認定統計士課程修了。
現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。
そのかたわら、2021年、会員制情報配信サイト「THINX-LAB.」をリリースし、知見やノウハウの提供を開始。2022年、業界紙「TRYSEM CROSS」を出版し、現在も刊行中である。
THINX inc.
URL:https://www.thin-x.co.jp/
THINX-LAB.
URL:https://www.thinx-lab.com/
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1986年生まれ。文部科学省認定統計士課程修了。
現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。
そのかたわら、2021年、会員制情報配信サイト「THINX-LAB.」をリリースし、知見やノウハウの提供を開始。2022年、業界紙「TRYSEM CROSS」を出版し、現在も刊行中である。
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