私が執筆を行う時やメディア出演する際、「台データ(※)」を扱うことはほとんどしない。そして、それは意図して行っている。「台データ」から得られるもののほとんどは、“事実の整理整頓”にしか使えないようなデータが多く、重要なインサイトを取るに足らないと考えているからだ。もちろん、「台データ」から得られるインサイトに意味がないという話ではない。

さて、本稿でも意図して「台データ」は使わずに論じてみたいと思うのだが、遊技機の「偏差値分析」という聞きなれない分析手法からインサイトを引き出す方法についてまとめることとする。

※台データ…アウト・売上・粗利

偏差値分析を使い示唆を得る

「偏差値分析」と聞いて全国模試や大学受験などを想像する方が多いのではないだろうか。基本的な考え方としては同じ考え方となる。ある集団において当該機がどの位置づけとなるのかを客観的に判断することを目的とした分析で、プレイヤーの嗜好や行動にマージ（合併・融合）させ示唆を得る手法のひとつとなる。市場にある同じ属性集団に該当する遊技機の中で相対的に判断し、どの程度のポテンシャルを有した機種なのかを測る狙いがある。

参考までに偏差値の基準をまとめた。



偏差値を測る上での評価項目は6つ設けており、私の表現で言えば、「勝ちの魅力」と「遊びかたの質」と呼ぶ指標から具体的にしていく。これは「勝ちの魅力」に引き寄せられた結果として、プレイヤーはどれだけ粘り込んで遊技しているのかを分析したものとなる。

具体的な項目は以下となる。





では、本稿を執筆している段階でリリースされた『S／OVERLORD絶対支配者光臨Ⅱ／SX』（以下、『オーバーロード』とする）の偏差値を使い解説することとする。

先に調査対象機種の偏差値を図にまとめた。



評価の方法はいたってシンプルで、レーダーチャートで表された6角形が大きければ大きいほど遊技機のポテンシャルは高く評価できる。
調査対象機種となる『オーバーロード』の偏差値を考察すると、非常にバランスの取れた機種であることが示唆される。そして、遊技機のポテンシャルとしては『S MHWアイスボーンZF』（以下『アイスボーン』とする）に類似しており、「勝ち金額」は低いが「勝ち率」は高いという特徴を有している。

そして、両機種共々、「遊びかたの質」は『L HEY！エリートサラリーマン鏡PA4』（以下、「鏡」とする）より高い偏差値を示し、「勝ちの魅力」に起因する要素（勝ち率・勝ち金額のどちらに起因しRvが形成されているのか）は違えど、Rvの偏差値はほとんど大差がない。「スマスロ」に対する疑問や不安の声は、このあたりのデータが裏付けされたものとなるだろう。

次に、さらに勝ちの魅力を客観的とらえ分析することとする。私はそのような分析を「勝ちの質を表すバランスシート」と呼んでいる。以下に、「勝ちの質を表すバランスシート」を図示しておく。



上図バブルチャートは、横軸に「勝ち金額」、縦軸に「勝ち率」を置き、バブルのサイズは「Rv」の大きさを表したものとなる。まず、目にとまるのは『L革命機ヴァルヴレイヴD』（以下、『ヴァルヴレイヴ』とする）だろう。「勝ち金額」25,920円、「勝ち率」31.66％、そして「Rv」は驚異の8206vとなった。『ヴァルヴレイヴ』が示した「Rv」は、「パチンコ」「パチスロ」含めて最大となる。その意味では、一括りに横並びに比較される機種はなく“唯一無二”のポジション取りに成功している。また、「勝ち金額」に起因し「Rv」が形成されている様子から、「勝ち金額重視派層」にとっては魅力的に映るはずである。

では、調査対象機種となる『オーバーロード』に迫ることとする。結論から言えば、これも“唯一無二”のポテンシャルを有した機種となる。『ヴァルヴレイヴ』とは対照的で、「勝ち金額」は低いものの、「勝ち率」が43.28％となり、他にはない魅力を有していることが示された。したがって、「勝ち金額重視派層」の一方にいる「勝ち率重視派層」にとって魅力的な機種であることが示唆される。その意味では、『アイスボーン』も「勝ち率重視派層」に支持されるポテンシャルがあると考えられるため、島レイアウトなどのアクション出しを思考する上では近くに配置する方が効果を発揮しやすいなどが考えられる。

THINX-LAB. Olap sis（シンクスラボ・オーラップシス）

今回、ご紹介したような「偏差値分析」や「バランスシート」などの分析データが閲覧できるWebサービスを開始いたします。β版のリリースを5月上旬ごろに予定していますので、ご興味ある方はTHINX𠮷元までご連絡ください。（info@thin-x.co.jp）





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