2022-09-28
社会保険労務士 齊藤労務事務所 齊藤 拓也
産後パパ育休(出生時育児休業)について
人事・労務
皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回のコラムでは、「産後パパ育休(出生時育児休業)」について書かせていただきます。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは
産後パパ育休とは、来月(2022年10月)から改正される育児・介護休業法で新しく創られた休業制度の通称で、正式な呼称を「出生時育児休業」と言います。報道などでは「男性版の産休」とも呼ばれたりしています。
産後パパ育休は、既存の産前産後休業や育児休業とは異なる別個の休業制度で、詳細は後ほど説明しますが、子の出生後8週間以内に最大4週間休業することができる等の特徴があります。従来のパパ休暇(父親が子の出生後8週間以内に育児休業を取得した場合に再度育児休業が取得できる制度)に、より柔軟性をもたせた休業制度と言えます(産後パパ育休の制度化に伴い、パパ休暇は廃止)。
産後パパ育休の対象者
産後パパ育休は、その名のとおり、男性の育児休業取得促進を目的に創設された制度で、対象者は男性労働者が想定されています(子が養子の場合等は女性労働者も対象)。なお、雇用形態が有期雇用である労働者については、子の出生日から起算して、8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない場合に対象となります。また、労使協定を締結することで、次の労働者を産後パパ育休の対象から除外することができます。
- 入社1年未満の労働者
- 申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
産後パパ育休の特徴
■ 子の出生後8週間以内に最大4週間の休業を取得でき、分割(2回)での取得も可能
男性の育児休業が産後直後や短期間での取得が多いことを踏まえ、産後パパ育休では、子の出生後8週間以内に限定する形で、最大4週間の休業を取得することができ、加えて、2回に分割して取得することができるようになっています。例えば「出産直後」と「産後一時的に帰省していた妻が戻ってくる時」など個別の状況に応じて休業を取得することが可能です。
ちなみに、前述のとおり、産後パパ育休は、従来の育児休業とは別の制度であるため、産後パパ育休を取得した後に従来の育児休業を取得することもできます。2022年10月以降、従来の育児休業も分割(2回)取得が可能になりますので、例えば、子の出生後8週間以内に産後パパ育休を2回、8週間を超えた所定の期間内に育児休業を2回、計4回の休業を取得するといったこともできます。
■ 取得の申出期限は原則2週間前
産後パパ育休は原則、取得する日の2週間前が申出の期限となります。従来の育児休業の申出期限は1か月前ですので、それよりも短くなっていますが、申出期限をより短くすることで、申出のしやすさ、つまり、休業の取得しやすさが確保されていると言えます。
一方で、実務上、2週間前の申出では業務の引継ぎがスムーズに行えない等の懸念があります。このような場合は、労使協定に「雇用環境整備等の措置」(※)を定めることで、申出期限を1か月前までとすることができます。
※「雇用環境整備等の措置」とは、以下の(1)~(3)のことで、これらすべてを実施する必要があります。
- (1)次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること。
- 育児休業に関する研修の実施
- 育児休業に関する相談体制の整備
- 育児休業の取得に関する事例の収集・提供
- 育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する方針の周知
- 育児休業申し出をした従業員の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分または人員の配置に関する必要な措置
- (2)育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。(3)育児休業申し出に係る当該従業員の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取り組みを行うこと。
■ 休業中の就業が可能
従来の育児休業中は原則就業禁止とされていますが、産後パパ育休による休業中は、あらかじめ労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主が合意した範囲内で就業することが認められています。ただし、就業は労働者の希望を前提としており、会社が一方的に就業を強いることはできません。
なお、休業中に就業できる上限は、休業中の当該労働者の所定労働日数、所定労働時間の半分とされており、例えば1日8時間、週5日勤務している労働者が2週間休業する場合(休業中の所定労働日数10日、所定労働時間80時間の場合)、休業中に就業できる日数の上限は5日、就業時間の上限は40時間となります。出生時育児休業給付金の受給について
産後パパ育休は育児休業と同様、取得した休業を有給扱いとすることまでは求められていないため、就業規則の定め等がなければ基本的には無給になりますが、受給資格を満たしている場合は、給付金(出生時育児休業給付金)を受給することができます。
出生時育児休業給付金の受給額は、育児休業給付金と同じように給与の約7割(休業開始時の賃金の67%)となります。支給申請は所定の期間内(出生日の8週間後の翌日から起算して2か月後の月末まで)に行う必要があり、また、休業を分割して取得した場合においては、1回にまとめて申請する必要があります。そして、制度上、休業中の就業日数が10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下でなければ受給することはできないため、その点にも留意しなければなりません。
今回は産後パパ育休についてご案内させていただきました。
2022年10月からは、産後パパ育休の制度化以外にも、今回のコラムでも触れたとおり、従来の育児休業も分割取得が可能になったり、育児休業中の社会保険料免除の要件も変更になるなど、就業規則の改定や社内ルールの変更、給与計算方法の再確認等が必要になると思われます。事業主様や人事ご担当者様はお間違えのないようご注意下さい。
社会保険労務士 齊藤労務事務所 齊藤 拓也
千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。