CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2022-08-24
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
被扶養者が社会保険に加入した場合の家計負担


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
職業上、企業様の社会保険の手続きや給与計算に関与していますが、たまに従業員の方から「配偶者の社会保険への加入を検討しているが、加入後どのぐらい勤務すれば家計に有利か」といった趣旨のご相談を受けることがあります。

状況としては、勤務時間を増やして社会保険への加入を検討しているものの、被扶養者から外れることにより、所得税や住民税、社会保険料が負担増となって、家計が圧迫されることを懸念されていると思われます。

そこで今回は、「社会保険への加入を検討している被扶養者が社会保険に加入した場合に、家計にどのぐらい所得税や住民税、社会保険料の負担が生じ得るか」といった観点から、該当配偶者の年収毎にシミュレーションを行いたいと思います。

■ ケース


  • 夫:45歳、年収480万円。
  • 妻:45歳、年収96万、103万、120万、150万、200万円の5パターン。
  • 子:19歳、収入なし。


■ 前提


  • 夫妻ともに給与収入以外の収入はない。
  • 妻は夫の配偶者控除又は配偶者特別控除に該当。
  • 子は夫の扶養控除(特定扶養親族)に該当。
  • 上記設定以外の所得控除(自身の基礎控除は除く)はない。
  • 夫の標準報酬月額は毎月410千円。賞与なし。
  • 妻の標準報酬月額は毎月126千円(④)と毎月170千円(⑤)。賞与なし。
  • 健康保険と厚生年金保険の年間保険料は、それぞれ2022年3月分以降に適用されている保険料×12(協会けんぽ千葉支部)。
  • シミュレーション内の理論手取りとは、年収から社会保険料、所得税及び住民税を差し引いた数値。
  • 雇用保険料、前年度分の住民税及びその他の控除は考慮しない。
  • 復興特別所得税の計算は省略する。


■ シミュレーション


① 妻の年収が96万円の場合(夫の被扶養者)




② 妻の年収が103万円の場合(夫の被扶養者)




③ 妻の年収が120万円の場合(夫の被扶養者)




④ 妻の年収が150万円の場合(勤務先で社会保険に加入)




⑤ 妻の年収が200万円の場合(勤務先で社会保険に加入)




■ シミュレーションから分かること


【夫の所得税】


  • 妻の年収が150万円以内だった場合、夫は配偶者特別控除により配偶者控除と同額の控除を受けることができるため、その範囲内であれば夫の所得税が増加することはない。
  • 一方、配偶者特別控除は、対象となる配偶者の年収が150万円超以降になると、享受できる控除額が漸減していく仕組みで、201.6万円以上になると控除額は0円となるため、妻の年収が150万円を超えてくると夫の所得税は増加していく。


【妻の所得税・住民税】


  • 年収が103万円だった場合、所得税は課税されないが、住民税は課税される(制度上、給与収入が100万円を超えると住民税が課税される可能性あり)。
  • 年収が100万円や103万円を超えて住民税や所得税を課税されても、年収が120万円前後なら税額負担はそこまで大きくない。


【妻の社会保険】


  • 所得税と住民税の合算控除額よりも社会保険料の控除額の方が理論手取りに与える影響は大きい。
  • 妻の年収が130万円未満であることが見込める場合で、妻が勤務先で社会保険の加入要件に該当しないとき、つまり、社会保険の被扶養者の範囲内であるときは、夫妻の所得税と住民税を考慮しても、妻の年収が130万円により近い方が理論手取りは多くなる。


■ シミュレーション結果を踏まえた対策


【夫の被扶養者でいる場合】


見込み年収130万円に近づけば近づくほど、より世帯収入を増やすことができるため、そこを目安に勤務する。

【妻が社会保険に加入する場合】


一つの目安としては年収150万円以内で勤務することが挙げられるが、収入が多いほど手取りは増えるため、可能であるならばフルタイムへの勤務転換も選択肢として考えられる。自身で社会保険に加入すると、健康保険の傷病手当金の保障を確保できたり、将来的に厚生年金の受給が望めるので、その点は大きなメリット。


今回は、被扶養者が社会保険に加入した場合の家計に与える所得税や住民税、社会保険料の負担について書かせていただきました。
ご不明な点等がございましたらご連絡下さい。



このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。