CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-12-22
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
2022年の労働法関係の主な改正


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回のコラムでは来年に向けて、「2022年に施行される労働法関係の主な改正」について書かせていただきます。

2022年に施行される労働法関係の主な改正


  1. ①育児休業に関する改正
  2. ②パワーハラスメント防止措置に関する改正
  3. ③女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画に関する改正
  4. ④傷病手当金に関する改正
  5. ⑤社会保険の適用拡大に関する改正


上記が2022年に施行される主な改正になりますが、今回は①、②、④、⑤について簡単にご案内させていただきます。なお、それぞれ施行日が異なっておりますので可能性がある事象については施行日を意識してお読みいただければと思います。

育児休業に関する改正


■男性の育児休業取得促進のための柔軟な枠組みの創設(2022年10月1日施行)


  • 子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業が取得可能
  • 原則休業の2週間前までに申し出る必要あり
  • 分割(2回)取得が可能(初めにまとめて申し出る必要あり)
  • 労使協定の締結により休業中に就業することも可能


男性が育休を取得しやすくするための改正で、従来の育児休業と同様、育児休業給付金の対象となる休業です。分割取得(2回)が可能ですので、例えば「出産直後」と「産後一時的に帰省していた妻が戻ってくる時」など個別の状況に応じて休業を取得することができます。

この休業は制度上「出生時育児休業」と呼ばれ、通称を「産後パパ育休」とされています。なお、「産後パパ育休」の制度化により現行の「パパ休暇」は廃止となります。

■雇用環境整備及び個別の周知、意向確認の措置の義務(2022年4月1日施行)


  • 育児休業、産後パパ育休の申し出が円滑に行われるよう「相談窓口の設置」等の措置を講じる必要あり
  • 妊娠、出産を申し出た労働者(配偶者の場合も含む)に対して制度に関する周知と休業の取得意向の確認を個別に行う必要あり


イメージとしては「育児休業を取得しやすい社内環境づくり」が必要になるような感じです。
両立支援等助成金を活用等している場合は、育児休業に関して法定以上の対応をしていることが少なくありませんので、もしかしたら「運用を少し変えれば大丈夫」、「すでに対応済」というような企業もあると思われますが、そうではない企業については今一度体制の見直しが必要となりますのでご留意下さい。

■育児休業の分割取得(2022年10月1日施行)


  • 分割(2回)取得が可能
  • 夫婦ともに分割(2回)取得可能
  • 取得する際に申し出ればOK
  • 夫は育児休業と産後パパ育休を利用することにより子が1歳までの間に4回まで取得が可能


現行の育児休業は原則、一度終了したら再度取得することはできませんが、今般の改正により期間内ではあれば再度取得することができるようになります。子育て、職場状況等に応じて夫婦で交代して育児休業を取得するといったような使い道が想定されます。

■有期契約労働者の要件緩和(2022年4月1日施行)


  • 「引き続き雇用された期間が1年以上」という取得要件が撤廃
  • 「1歳6か月までの間に契約が終了することが明らかでない」という取得要件は維持


育児休業は職場復帰(雇用維持)が大前提ですので、労働契約を更新する可能性が低い有期契約労働者は原則取得ができない建付けでしたが、これが緩和される形となります。

パワーハラスメント防止措置に関する改正


■パワハラ防止のための相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講じる義務(2022年4月1日施行)


こちらは2020年6月1日に施行された改正労働施策総合推進法によるもので、大企業には既に適用されていますが、これまで努力義務であった中小企業に対して2022年4月1日から適用される形となります。
アバウトな説明にはなりますが、「パワハラ防止の社内方針の明確化と周知、啓発」、「苦情などに対する相談体制の整備」、「パワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応」等を講じることが必要となります。

傷病手当金に関する改正


■傷病手当金の支給期間の通算化(2022年1月1日施行)


  • 支給期間が「支給開始日から起算して1年6か月間」から「支給開始日から通算して1年6か月」に改正


傷病手当金が支給されている期間だけで1年6か月をカウントすることになります。つまり、支給開始日から起算して1年6か月までの間に就業等により傷病手当金が支給されない期間があった場合、その期間はカウントしません。従って、療養(就業)状況によっては支給開始日から起算して1年6か月を超えても傷病手当金が支給されることもあり得ます。
なお、この改正は2020年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金が対象となります。

社会保険の適用拡大に関する改正


■短時間労働者の健康保険、厚生年金保険の適用拡大(2022年10月1日施行)


以下全てを満たす場合は短時間労働者も健康保険、厚生年金保険へ強制加入となります。

  • 被保険者(短時間労働者除く)が100人超の企業
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が2か月を超えて見込まれる
  • 賃金の月額が88,000円以上
  • 学生でない


現行の「被保険者(短時間労働者除く)が『500人超』」の人数に係る要件が「100人超」に、「雇用期間が『1年』を超えて見込まれる」の雇用期間に係る要件が「2か月」にそれぞれ改正される形となります。

なお、「100人超」を満たさない場合は、従来どおり原則として「週所定労働時間が被保険者(正社員)の3/4以上、かつ、月所定労働日数が被保険者(正社員)の3/4以上」に該当する従業員が強制加入の対象となりますが、2024年10月1日からは前述の人数に係る要件が「被保険者(短時間労働者除く)が50人超」となるため、今後はより多くのアルバイト、パートが社会保険に加入することとなります。

今回は2022年の労働法関係の主な改正ついてご案内させていただきました。
育児休業やパワーハラスメント防止措置に関しては就業規則の改定が想定されますのでご留意下さい。

1年間本コラムをお読みいただき誠にありがとうございました。
来年も何卒よろしくお願い申し上げます

このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。