CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-08-25
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
2021年10月以降の最低賃金について


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は最低賃金についてお話をさせていただきます。

全国平均で昨年比28円アップの930円に


8月13日、厚生労働省より、各地方(都道府県)で審議された最低賃金の改定額が公表されまして、全国平均で昨年比28円増の930円となりました。本コラム作成時点では、各都道府県労働局における関係労使からの異議申出に係る調査審議の段階ではありますが、ほぼ確定額と言えるでしょう。

昨年は新型コロナウイルスの影響もあり、全国平均で前年比1円増の902円でありましたが、それと比較すると本年は大きなインパクトがあります。ちなみに、今回の前年比28円増は過去最大の引上げ幅となります。私が学生だった2000年頃、自身がアルバイトをしていたコンビニ(東京)の深夜帯の時給は深夜割増込で950円でしたので、昨今は本当に時給が高くなった印象があります。

最高額は東京都の1,041円、最低額は高知県、沖縄県の820円


さて、都道府県ごとの最低賃金は、物価等その地域の実情を踏まえて決定される仕組みとなっていますので、都道府県ごとで金額は異なります。それでは最低賃金が一番高い都道府県はどこでしょうか。何となくお分かりになるかと思いますが、一番高いのは東京都でありまして、本年の改定額は1,041円となっています。

これに続くのが神奈川県の1,040円、その次に大阪府の992円といった具合になっています。やはり、人口、商業が集約している地域は高い傾向にあると言えます。反対に一番低いのが高知県と沖縄県の820円で、その次が岩手県、鳥取県、愛媛県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の821円となっています。

10月勤務分から時給の見直しが必要に


それでは新たな最低賃金はいつから適用されるのでしょうか。こちらも都道府県によってまちまちですが、多くは10月1日から適用となります(10月2日適用、10月6日適用などの都道府県もあります)。給与計算をご担当されている方々におかれましては、適用日以降の勤務分は新たな最低賃金以上の時給で給与計算する必要がありますのでご留意下さい。

また、給与締日が月末ではなく15日や20日である会社の場合は、給与計算区域の当初(9月中)から時給を改定するのか、給与計算区域の途中(最低賃金が適用される10月)から時給を改定するのかなども社内で認識を合わせる必要があります。加えて、改定時においては事前の従業員への説明や雇用契約の再締結などもお忘れのないようご注意下さい。

月給制の従業員も要確認


「最低賃金は時給制のアルバイトやパートだけを確認すればよい」といったお考えをお持ちの方、結構多いです。決してそのようなことはなく、最低賃金は月給制の従業員にも適用されます。

■時給の確認方法


月給制の場合における時給は以下の計算式で算出することができます。

時給 = 月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間


例えば、「月給165,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」だった場合、時給は「165,000円÷160時間=1,031.25円」となります。

ちなみに、時給を算出(最低賃金を確認)するときの「月給」とは、実際に支払われる賃金から以下の賃金等を除いたものがそれに該当します。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当


従いまして、例えば「基本給165,000円、通勤手当10,000円、1箇月平均所定労働時間160時間」のようなケースでは、「(165,000円+10,000円)÷160時間=1,093.75円」と計算するのではなく、「165,000円÷160時間=1,031.25円」と計算します。通勤手当は除かなければなりません。

除外すべき賃金を誤って計算対象とすることによって「実は時給が最低賃金を下回っていた」といったことがないよう確認、計算方法には十分な注意が必要です。

■固定時間外手当の支給がある場合も要注意


手当の一部として、固定(みなし)の時間外手当や深夜手当を支給している場合は、そこもケアする必要があります。

例えば、本年10月から1,041円が適用される東京都に所在の会社において、「基本給165,000円、時間外40時間分の固定時間外手当51,600円、1箇月平均所定労働時間160時間」のような給与状況があった場合、時給は「165,000円÷160時間=1,031.25円」となりますので、時給ベースで1,041円以上になるよう基本給を「1,041円×160時間=166,560円」とする必要があります。

そして、時間で計算されている固定時間外手当についても、時給の改定にあわせる形で「1,041円×1.25×40時間=52,050円」と改定する必要があります。ここの改定を失念すると、将来的に「最低賃金は満たしていたものの未払い賃金が生じていた」といった事象が起こり得ます。

今回は最低賃金について書かせていただきました。
時給の改定漏れ等がないようご注意下さい。

このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。