CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2022-02-16
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝
複合カフェにフィットネス… スーツのAOKIに見る、成功する異業種参入の進め方


スーツ専門店大手のAOKIホールディングスの異業種参入が好調です。

複合カフェの「快活CLUB」、カラオケボックスの「コートダジュール」、セルフトレーニングの「FIT24」などのエンターテインメント業態が売上の40%を」占めるまでに成長し、スーツ専門店の物販事業以外の主力事業に成長しました。

同社にみる、異業種参入のきっかけと成功について、触れてみたいと思います。

きっかけは「有休スペースの活用」


郊外型の紳士服専門店を展開してきた同社は、1990年代後半ごろから紳士服の売上が伸び悩むようになりました。また、売上低下による不採算店舗の増加や、店頭在庫の調整などから有休スペースが生まれる様になりました。

有休スペースの活用を目的とした異業種として、2003年にAOKI幕張店において、「快活CLUB」1号店がオープンし、その後、カラオケBOX業態の「コートダジュール」や、24時間フィットネスの「FIT24」などの異業種を積極的に展開中です。

まさに、既存物件を活用した異業種参入の成功事例と言えますが、パチンコホールにおきましても同様の課題を抱えている店舗が多いと思われますので、大いに参考にしたいところです。

また、既存業種(ホール)との親和性(シナジー)の観点から業種を選択する傾向があると思われますが、他方、紳士服の物販とこれらエンターテインメントサービスとの直接的なシナジーはさほどないと推察されることから、既存業種とのシナジーではなく、既存店舗の立地や商圏から最も成功しそうな業種を選択することが合理的であると考えることができます。全く別の発想で取り組む必要があると言えるでしょう。

異業種への参入


紳士服販売を専業としていた会社が、全く別と言えるエンターテインメント業態のノウハウをどの様に取得したのか。実態はトライ&エラーの連続であったり、初期においては他社フランチャイズに加盟したりといった、試行錯誤の繰り返しとなります。

郊外型紳士服専門店はもとより、複合カフェにおいても多くの企業が参入しては消えていきました。成功するまで改善を繰り返してやり切る力と、市場があると踏んだら粘り強くトライし続けることが、成熟市場時代の生きる道と言えるのではないでしょうか。

従業員の成長機会こそが異業種参入の見えざる資産となる


AOKIホールディングスはグループ経営において様々な会社や事業が存在しますが、業態別の専門職の採用は一部に限ったもので、多くは、スーツ専門店で接客力の基礎や経営理念を学び、他の業態で活躍するケースが多い様です。また、大胆な人事異動や社内カンパニー制導入して様々な事業や経営に挑戦できる機会を提供しています。

異業種参入の成功や失敗といった近視眼の視点ではなく、従業員の方々が様々な経験を積む機会を与えて、その後のグループ経営に要循環を与える機会となることが異業種参入の「見えざる資産」と言えるではないでしょうか。また、市場があればトライ&エラーを繰り返して成功に導く力も問われることとなります。

オーナーや幹部社員の誰かが1人で引っ張るものではありませんが、他方で、挑戦できる機会や環境を与えてあげることがリーダーに問われることかもしれません(了)。


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船井総研 金融・M&A支援部

<お問合せ先>thirano@funaisoken.co.jp
<HP>https://funai-ma.com

このコラムを書いたのは
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝

2004年 船井総合研究所中途入社。パチンコ、建設、不動産などの事業再生を中心に再生支援実績は50件を超す。M&Aでは法的手続など中規模以上のアドバイザリー業務から小規模の事業整理まで幅広く対応。経営戦略、ファイナンス、M&Aなどの成長支援に取り組む。一般社団法人日本ターンアラウンドマネジメント協会 準会員 事業再生士補。パチンコ歴30年。
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