CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2022-03-17
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝
M&Aのメリットとデメリット



経過措置終了の1年を振り返る


新規則への完全移行から約2か月が経ちましたが、いかがでしょうか?「単価は移行前とさほど変わらないが、商圏内の客数の減少が目立つ」といった趣旨のご意見を聞く機会が多い様です。例年、3月中旬以降は稼働の落ち込みが目立つ時期ですが、自店もさることながら、市場全体の盛り上がりが待たれるところと思います。

さて、旧要件機の最終稼働月となりました2022年1月ですが、2022年1月末日の全日遊連加盟のホール営業店舗数は7544店舗となり、1年前となる前年同月比で687店舗の減少となりました。経過措置最終の1年間で687店舗の減少の結果となりましたが、同期間の新規出店数を考慮すると、この1年間の休廃業数は700店舗超となります。

内訳を見ると、300台未満の小型店が40%以上を占める結果となりましたが、これまで小型店を支えてきたスロットの今後の見通しの不透明さが背景にあるものと思われます。

また、今後(特にスロット)の見通し次第では、現在の約2000店舗の小型店を中心に、今後も休廃業の増加が予想されるところがあり、新規則移行後も店舗数の減少傾向が続くことが予想されます。

ホール企業の動向


主な法人別の動向を見ると、店舗数3位のアンダーツリー(大阪)は昨年対比で8店舗増となりました。内訳として、記憶に新しいアプリイ(静岡)のM&Aや昨年末の2日連続グランドオープンが示すとおり、依然としてM&Aと新規出店を併せた店舗数増加が見られますが、他方、既存店の閉店も見られることから、M&A、新規出店、閉店をバランスよく実施する印象があります。

続いて、オークラホールディングス(長崎)がM&Aでパラッツオ(東京)を取得し業界内で大きな話題となりました。また、アミューズ(大阪)がM&Aでどきわくランド(埼玉)を取得し店舗数を増やす結果となりました。経過措置初期のM&Aでは、旧要件機の取得を目的とするケースが見られましたが、経過措置の最終年となった昨年もM&Aの動きが見られた年となりました。

以上が示すとおり、ホール企業様においてM&Aによる組織再編は一般化したと言えますが、他方、アンダーツリーの事例が示すとおり、M&Aによる取得と併せて既存店の整理を同時に進める手法にも注目すべきところと思います。

M&Aのメリットとデメリット


ホール企業様において一般化したM&Aですが、M&Aの買手様から主に聞こえてくる、パチンコホールM&Aのメリットとデメリットを整理すると、以下となります。

■ 買手におけるメリット


  1. 店舗数と売上を一気に増やす事が出来た。
  2. 新店よりも営業の見込みにブレが少ない。
  3. 新店よりも早く開店することが出来た。
  4. 買手市場の中で比較的安く取得が出来た。
  5. M&Aの情報が多く集まる様になった。


■ 買手におけるデメリット


  1. 設備の不具合等で結局お金がかかった。
  2. 規模や設備の面で見劣りがする。
  3. 面倒な契約を引き継いでしまった。
  4. 人材の活用法が見つからない。
  5. 不採算店を閉める事となった。


まず、デメリットとして多く聞かれることを整理すると、最も多く聞かれることとして、「想定よりもお金がかかった」話を挙げることができます。また、その要因として、契約前の調査不十分を挙げることができます。

売手と買手の当事者間において、金額面の条件交渉が先行しやすいところがあり、物件調査が不十分になりやすい傾向がありますが、想定外の不具合以外にも、いざ営業を考えた際の増台や設備の新規交換が発生するなどのケースは多く、営業部門との事前のすり合わせが難しいところにも留意が必要です(秘密保持の観点から契約前の社内共有に一定の制限を要するため)。

また、デメリット③の契約の引継ぎですが、引き継いだ契約内容の精査が不十分だったため、想定外の費用発生や解除に難儀する話も聞かれることがあります。いずれにおいても、引継ぐ資産と契約に関する事前調査は注意すべきポイントと言えるでしょう。

次に、メリットとして多く聞かれることを整理すると、M&Aの最大の魅力として、店舗数と売上を一気に増やすことができること、さらに言えば、M&Aの情報がその後多く集まる点を挙げることができます。複数店舗のM&Aの場合、デメリット⑤のとおり、引き継いだ後に閉店する店舗が含まれるケースも多いですが、他方、それ以上に店舗数と売上を一気に引き上げることができる点がM&Aの最大の魅力と言えるでしょう。

デメリットに陥りやすい「想定外」のコストや契約上のリスクを事前に把握し、契約に如何に反映するかは、M&Aのノウハウとも言えますが、2022年も引き続きM&Aに注目する年になると思います(了)。

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<お問合せ先>thirano@funaisoken.co.jp
<HP>https://funai-ma.com
このコラムを書いたのは
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝

2004年 船井総合研究所中途入社。パチンコ、建設、不動産などの事業再生を中心に再生支援実績は50件を超す。M&Aでは法的手続など中規模以上のアドバイザリー業務から小規模の事業整理まで幅広く対応。経営戦略、ファイナンス、M&Aなどの成長支援に取り組む。一般社団法人日本ターンアラウンドマネジメント協会 準会員 事業再生士補。パチンコ歴30年。
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