CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-04-21
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝
コロナ融資は「借りる」から「見直す」「返す」のフェーズへ。


2020年は、”コロナ融資”の影響で、これまであまりお金を借りてこなかった企業様も融資を利用した年でした。コロナによって融資が急増した企業が2021年にどの様に返済していくべきか、財務の視点からお伝えします。

突然ですが、融資契約の際に記入した「契約書」を隅々まで見たことはありますか?「ここに印鑑をお願いします」と銀行員に言われるがまま記入した「返済据置き融資」は何年で借りましたか?

2020年は、国の旗振りの元に「借りられるだけ借りた」企業が激増した年でした。世界を揺るがすコロナ禍に伴い、国内では無利子・無担保という破格の条件を持つ制度融資が新設され、保証協会、日本政策金融公庫等の政府系窓口を利用すれば、非常に簡単にお金を借りられる状況が生まれたことに起因します。貸し出しの条件が緩く、金融機関も次々に提案書を持ち込んでくるために、「借りるつもりはなかったけれど、利子も担保も不要で、返済もしばらくないから、とりあえず借りておこう」と融資契約をした企業様が多かったのではないかと思います。

企業は1にも2にも資金繰りが重要であり、コロナ収束の見通しが持てない状況が続く中、条件の良い融資を受けて現金を増やしておくことは決して間違いではなかったのですが、問題は「なぜ、その据置期間を設定したのか?」という問いに回答できない企業様が非常に多い点です。次々に融資を受ける事が出来た時期を経て、借入が何本にもわたっている会社はたくさんあります。そのような企業様にお聞きします。それぞれの融資が、いつ借りて、月の返済額はいくらで、いつまで返し続けるものか、把握できていますか?コロナ禍の影響でほとんど把握できていない方が急増しているのは、言うまでもありません。

むろん、当時は「借りられるだけ借りる」が正解であり、まず借りて、安心を得ることが非常に重要だったことは間違いありません。コロナで先行きが不安ななか、どう切り抜けていくかを考えるうえで、まず受けられた融資が、どれほどの希望になったか。当時はそれが最善の策だったと言えますが、返済期限も近づいてきている今、それらの融資を、整理して次に備えていくタイミングとなります。

今のタイミングであらためて確認をしていただきたいのは、自社の融資契約書のファイルを取り出して、以下のチェックです。

1.数年前の借入金と今年借りた借入金の期間がバラバラである。
2.どれがプロパー融資で、どれが保証協会付き融資か分からない。
3.何のために借りたものか分からない融資がある。
4.金融機関の営業マンに「お願いします!」と言われて借りた融資がある。
5.保証協会付融資を使っているのに「保証決定通知」という書類を保管していない。
6.毎月の融資返済日が揃っておらず、金融機関任せである。


1つでも当てはまる様なら、融資の管理が不十分と言えるでしょう。返済の額や期間にバラつきがあり、資金繰りに悪影響が出ているかもしれません。1、2件の運転資金を借りるなら頭で計算できる範囲内です。しかし、これが5、7、10件と件数が増えて時間もたてば、ごちゃごちゃになってしまい、いつの間にか様々な返済に追われたり、融資が返済できないといった最悪の事態も起こしてしまう危険があります。

「金融機関がバランスを取ってくれるのでは?」と感じられたかもしれません。たしかに、1つの金融機関と取引をしていれば、バランスを取ってくれる融資担当も多いでしょう。しかし、決算書を見る金融機関も他行の融資条件までは決算書に掲載されず、融資先から丁寧な説明がない限りは知る術がありません。企業様が自社の決算を理解し、金融機関に説明をしておかないと、自社に合わない、会社経営を苦しくする融資契約が増えてしまう可能性もあるのです。

返済のルールは借りる前に決めることができますが、資金繰りだけは「お金が足りないから今月は待って!」と言うことができません。条件の良い制度融資でも、無利子無担保という好条件に飛びついたことのツケを払わされる可能性があります。契約書を見てみて、上記のチェックリストに当てはまる融資、内容に不明な部分のある過去の融資があれば、今すぐ、借りた金融機関に依頼して説明をしてもらいましょう。説明を受け、自社に不利な内容になっている、変更したいと感じた部分については、変更の交渉をしてください。金利等の金利条件により変更できない場合もありますが、返済日を統一するだけでも、日々の資金繰りは圧倒的に読みやすくなり、経営の安定性を増すことができます。

いよいよ4月より高齢者のワクチン接種が始まりました。今後はコロナウイルスのワクチンが広がり、いずれは長かったコロナ市況も収束に向かうことでしょう。それと同時に、これまで用意されてきた様々な優遇制度も終わり、いよいよ企業は融資を「借りる」フェーズから、融資を「見直す」「返す」フェーズへと移行していきます。行き当たりばったりで何とか借りた、コロナに乗じて借りた、とりあえず借りた…これらがいずれ、企業にとって毒薬となり苦しくなってしまう前に。ぜひ、棚の奥にある融資契約書類を引っ張り出して、あらためて見直す機会を設けてほしいと思います。(了)


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船井総研 金融・M&A支援部
<お問合せ先>  thirano@funaisoken.co.jp
<HP>   https://funai-ma.com/
このコラムを書いたのは
株式会社船井総合研究所
金融・M&A支援部
シニアコンサルタント   平野 孝

2004年 船井総合研究所中途入社。パチンコ、建設、不動産などの事業再生を中心に再生支援実績は50件を超す。M&Aでは法的手続など中規模以上のアドバイザリー業務から小規模の事業整理まで幅広く対応。経営戦略、ファイナンス、M&Aなどの成長支援に取り組む。一般社団法人日本ターンアラウンドマネジメント協会 準会員 事業再生士補。パチンコ歴30年。
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