CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-04-28
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
両立支援等助成金について


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回のコラムでは「両立支援等助成金」という助成金をご案内させていただきたいと思います。

両立支援等助成金とは


両立支援等助成金とは「仕事と家庭の両立」や「女性の活躍推進」に注力している企業を支援するための助成金で、ここ数年、コースの追加や支援の加算など拡充傾向にあります。

国が「仕事と家庭の両立」や「女性の活躍推進」について強く意識していることが背景にあるためと考えられますが、「仕事と家庭の両立」や「女性の活躍推進」は企業活動における課題のひとつとして、多くの企業が向き合っている事案と思われます。この助成金の活用をご検討いただくことにより解消できる課題があるかもしれません。

以下2021年度の主なコースとなりますのでご参照ください(他のコース、支援もあります)。

■ 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)


男性社員が育児休業や育児目的休暇を取得した場合に支給。

  • 育児休業取得時:57万円(大企業は連続14日、中小企業は連続5日を要取得)(※)
  • 育児目的休暇の導入、取得時:28.5万円(大企業は8日、中小企業は5日を要取得)(※)

※対象社員へ個別支援することによる加算支給あり

■ 育児休業等支援コース


計画を立てて社員の円滑な育児休業の取得、職場復帰に取り組んだ場合等に支給。

  • 育児休業取得時:28.5万円
  • 職場復帰時:28.5万円
  • 新型コロナウイルス感染症対応特例(※):1人あたり5万円(上限10人分の計50万円)

※新型コロナウイルス感染症への対応として臨時休業となった小学校等(保育園、幼稚園、小学校、学童保育等)に通う子の世話をする社員に対し有給の休暇を取得させた場合が対象。

■介護離職防止支援コース


 計画を立てて社員の円滑な介護休業の取得、職場復帰に取り組んだ場合等に支給。

  • 介護休業取得、職場復帰時:28.5万円
  • 介護両立支援制度の利用時:28.5万円


■ 女性活躍化推進コース


女性社員の採用、昇進、配置、育成等について目標を立て、それを達成した場合に支給。

  • 取組目標の実施及び数値目標の達成:47.5万円


上記の内、「出生時両立支援コース」や「育児休業等支援コース」は、実際に想定される機会も多いと思われ、また、活用しやすい制度設計となっておりますのでお勧めのコースではあります。

一般事業主行動計画が一部コースで必須に


■ 所定の計画届は不要


通常、助成金を活用する場合は「キャリアアップ助成金計画書(キャリアアップ助成金)」や「人材開発支援助成金計画届(人材開発支援助成金)」のように事前に所定の計画届を労働局に届け出て、承認を得る必要があります。その届出がないと他の要件を満たした状態で支給申請したとしても助成金を受給することはできません。

一方、両立支援等助成金には、その所定の計画届に当たるものはなく、要件を満たした段階で支給申請する形式となっています(支給申請前の計画届や支給申請後の事後報告がない助成金はあまりないです)。

しかしながら、所定の計画届はないものの一部コースにおいては別途支給申請までに届出をしなければならない手続きがあります。それは「一般事業主行動計画」という名称の手続きになります。

■ 一般事業主行動計画とは


一般事業主行動計画は、両立支援等助成金自体を根拠として策定、届出が求められているものではありません。「次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)」と「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下「女性活躍推進法」)」という2つの異なる法律がありまして、それら法律に基づいて策定、届出が求められているものになります。

なお、下記に該当する場合は、策定、届出が義務となっています。

  • 「次世代法」の一般事業主行動計画:常時雇用する労働者が101人以上の企業
  • 「女性活躍推進法」の一般事業主行動計画:常時雇用する労働者が301人以上の企業(※)

※2022年4月1日から101人以上の企業が対象。

■ 名称は同じだけど中身は別物


名称はともに一般事業主行動計画ではありますが、別々の法律を根拠としているため、実は全くの別物になります。ここは非常に混同しやすい点で、両立支援等助成金の活用を契機に一般事業主行動計画の策定、届出に着手される場合は、予備知識の不足等から勘違いをする可能性がある部分ではないでしょうか。

本助成金の制度上、「出生時両立支援コース」や「育児休業等支援コース」を支給申請する場合は、「次世代法」に基づく一般事業主行動計画が必要となり、一方で「女性活躍加速化コース」を支給申請する場合は「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画が必要となっておりますが、一般事業主行動計画は一つしかないという認識を有していると、「女性活躍加速化コース」に取り組んで支給申請を試みたものの、「次世代法」の一般事業主行動計画しか策定、届出していなかったというようなことが生じ得ますので十分に注意が必要です。

ちなみに、それぞれ「一般事業主行動計画策定届」という所定様式がありますが、レイアウトがほぼ同じであることも誤認しやすい要因と思われますので、事前に様式番号等はご確認ください(計画期間が同じであれば所定共通様式での届出が可能となっています)。

■ 「公表」と「届出」


前述のとおり一部コースにおいては一般事業主行動計画の策定が必要となりますが、一般事業主行動計画は「公表」と「届出」を行う必要があります。

この「公表」と「届出」は異なる手続きを指しておりまして、「公表」とは「行動計画(所定様式なし)」を両立支援のひろば(専用サイト)や自社ホームページ等で公表をすることを表し、「届出」とは「一般事業主行動計画策定届」を労働局に届け出ることを意味しています。ここも非常に誤認しやすい点ですので注意が必要です。一般事業主行動計画策定届の届出をもって公表したことにはなりませんのでお気をつけください。

両立支援等助成金の活用にあたって


今回は両立支援等助成金についてコラムを書かせていただきました。
「出生時両立支援コース」や「育児休業等支援コース」をご検討される企業様が多いと思われますが、上記でも書かせていただきましたとおり、その際は「次世代法」に基づく一般事業主行動計画の策定が必要となりますのでご留意ください。

また、支給申請の要件として、社員への制度周知、就業規則(育児介護休業規程)への規定、対象者との面談、実施期間の決まり等があり、冒頭で書かせていただいた受給額については人数の制限等もあります。活用される場合はあらかじめ厚生労働省のサイトにてご確認いただければと存じます。


このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。