CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2024-02-28
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
【協会けんぽ】令和6年3月分からの健康保険料率



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は、令和6年3月分から適用される協会けんぽの健康保険料率の改定についてのコラムになります。

毎年3月分から改定


協会けんぽの健康保険料率は、都道府県ごとの医療費の水準に基づいて改定される仕組みで、基本的に毎年3月分(4月に納付する分)から改定されます。都道府県ごとに改定されるため、健康保険料率は各都道府県でまちまちです。以下は、一部都道府県の令和6年3月分から適用される健康保険料率になります。

  • 北海道:10.21%(10.29%)
  • 宮城県:10.01%(10.05%)
  • 千葉県:9.77%(9.87%)
  • 東京都:9.98%(10.00%)
  • 神奈川県:10.02%(10.02%)
  • 新潟県:9.35%(9.33%)
  • 愛知県:10.02%(10.01%)
  • 三重県:9.94%(9.81%)
  • 大阪府:10.34%(10.29%)
  • 島根県:9.92%(10.26%)
  • 福岡県:10.35%(10.36%)
  • 佐賀県:10.42%(10.51%)
  • 沖縄県:9.52%(9.89%)

※カッコ内は従前(令和5年3分以降)の健康保険料率。



ご覧のとおり本当に都道府県ごとで異なります。ちなみに、47都道府県の中で最も高い保険料率は佐賀県の「10.42%」、最も低い保険料率は新潟県の「9.35%」です。両県の標準報酬月額30万円の被保険者負担分の健康保険料(1か月分)を比較した場合、佐賀県は「15,630円」、新潟県は「14,025円」となりますので、実に1か月で「1,605円」の差が生じることとなります。

介護保険料率は全国一律1.60%へ引き下げ


40歳から64歳までの被保険者の場合は、健康保険料のほかに介護保険料が徴収されます。
健康保険料率が都道府県ごとに決定されるのに対し、介護保険料率は全国一律で同じ料率が適用される仕組みです。
令和6年3月分からは「1.60%」が適用されることとなり、従前の「1.82%」から引き下げとなりました。

健康保険料と介護保険料を合算して一つの社会保険料と捉えている被保険者の方は少なくないと思われますが、今回、介護保険料率が比較的大きな引き下げとなりましたので、そのような40歳から64歳までの被保険者におかれては、「社会保険料が減った」と感じるのではないでしょうか。

例えば、三重県では健康保険料率は従前比で「0.13%」の引き上げとなりましたが、介護保険料率は従前比で「0.22%」の引き下げとなりましたので、40歳から64歳までの被保険者はトータルで見ると「負担減」になっています(上記に健康保険料率は表記していませんが、石川県、山梨県、山口県の3県のみ、健康保険料率の引き上げ幅が従前比で「0.22%」超となったため、トータルで見ても「負担増」)。

少子化対策の支援金の徴収は令和8年度から


最近、「少子化対策の財源確保のため、社会保険料に月額500円程度が上乗せされる」というような内容のニュースや記事を見聞きする機会が多かったと思われます。その流れから、今回のコラムの健康保険料率の改定はその一環と受け取られた方もいるかもしれませんが、少子化対策の財源確保と今回の健康保険料率の改定に関連性はありません。

前述のとおり、健康保険料率の改定は毎年の定期のイベントであり、ニュース等で報じられている「月額500円程度の上乗せ」は含まれていません。

なお、「月額500円程度の上乗せ」は、「こども・子育て支援金」と呼ばれる制度のことで、令和8年度から徴収が開始されることとなっています。健康保険料と併せて徴収されることは決まっていますが、料率や徴収額はまだ決まっていません。しかしながら、健康保険料は標準報酬月額に応じて決まる仕組みであることを考慮すると、月額ベースで500円程度の負担増になる被保険者もいれば、500円未満や1,000円以上の負担増になる被保険者もいると考えられます。

給与計算への反映漏れに注意


昨今は、改定後の保険料率が自動的に反映されるような給与計算ソフト等を利用している会社がほとんどと思われますので、改定後の保険料率で計算されていないなどといった事務ミスは生じにくい環境にあるのではないでしょうか。ですが、事務ミスや誤りはいつでもどこでも誰にでも発生し得るものです。保険料率の改定時は次のような観点でのチェックをお勧めします。

■新しい保険料率が反映されているか


給与ソフト内で保険料率を確認できる場合は、協会けんぽが公表している実際の保険料率と照合することをお勧めします。給与ソフトを開発する業者が保険料率の設定や更新を誤ることはないと考えられますが、例えば、新たな保険料率反映時に、利用者側で都道府県を選択する処理が発生するような場合は、誤った都道府県を選択することにより、適切ではない保険料率が反映される可能性があります。改定のタイミングで誤った保険料率を反映させてしまうと、最悪、次の改定まで誤りに気づかないというような事態も想定されますので、十分に注意しましょう。

■保険料は適切に計算されているか


新たな保険料率を反映した給与の計算後は、少なくとも数名程度の保険料を検算することをお勧めします。理由としては、例えば、「給与の確定処理」と「新しい保険料率の反映処理」が前後してしまった場合、表面上は新しい保険料率が登録されているものの、計算自体は旧保険料率で計算しているというような事象が発生し得るからです。

「給与ソフトは万能。反映処理さえすれば大丈夫」と楽観視し過ぎて処理手順を誤ってしまっては元も子もありません。給与ソフトへの過度な依存等から生じる給与計算ミスは、検算という確認作業により防ぐことが可能です。

■社会保険料を直接入力や固定登録で計算している社員はいるか


給与ソフトの仕様にもよりますが、例えば、二以上事業所勤務者(※)の保険料を直接入力や固定登録している場合は、新しい保険料率を反映しても改定後の保険料で計算されない可能性があります。比較的メジャーな給与ソフトでも、二以上事業所勤務の自動計算に対応していないことがありますので、「利用者が多い給与ソフトだから問題ないだろう」というような思い込みは禁物です。

また、シンプルに二以上事業所勤務者であることを失念して、新たな保険料率の反映をきっかけに、通常の被保険者と同じように計算してしまうというようなミスも想定されますので、二以上事業所勤務者に関しては、必ず年金事務所から届く通知書と照合するよう心がけましょう。

※二以上事業所勤務者とは
複数の会社に所属し、それぞれの会社で社会保険の加入要件を満たしている場合は、それぞれの会社で社会保険に加入する必要があり、そのような被保険者を二以上事業所勤務者と言います。
二以上事業所勤務者の社会保険料は、各社での報酬月額(給与)の按分で決める仕組みであるため、各社で個別に算出する必要があります。
標準報酬月額及び保険料率の改定時には、年金事務所から保険料が記載された通知書が届くため、それを基に、改定後の保険料を給与ソフトへ反映させる、もしくは、給与ソフトの情報と照合するのが一般的です。


今回は、令和6年3月分から適用される協会けんぽの健康保険料率の改定についてのコラムでした。
これからも、本コラムを通じて皆様へ有益な情報をお届けできればと思います。



このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。