私はよく、個別の評価に関する質問をされたとき「木を見て森を見ず」という話をする。とくに、インパクトの強い「木」（遊技機）であればあるほど、実質的な価値をもたらすのかどうかを見極める目が曇りやすいので、意識的に“プレイヤーの使用文脈”という「森」を見るようにしている。ようするに、プレイヤーは「木」という遊技機をどのようなモノサシで判定しているのかに時間を費やさなければならないということだ。したがって、無意識レベルの領域に隠された「森」を見なければ、“遊技機スペック”のトラップからは抜け出せないと考えている。

つまり、遊技機スペックの話の先に答えがあるのではなく、ヒトとモノを繋ぐインターフェース、すなわちプレイヤーの使用文脈の先に隠されたウォンツを紐解かなければ“解”には近づけないという話である。

さて、本稿ではインパクトの強い「木」として登場した『eぱちんこ新必殺仕置人　激闘K6』（以下、『仕置人』とする）をはじめ、数々の「パチンコ」新機種がなかなか思うような結果を出せない要因について文字を走らせることとする。とくに、プレイヤーの使用文脈に関わる「森」を統計的な観点から分析すると、ゲーム性やスペック以前に、“ある問題”がインサイトとして得られたので一部だがご紹介したいと思う。

遊技機の魅力を知る前に脱落するプレイヤーの増加

前号（https://column.cfy.jp/single.php?bid=259）で記したAI予測が現実のものとなりそうな方向に進んでいる。『P新世紀エヴァンゲリオン15未来への咆哮』（以下、『エヴァ15』とする）、そして『P Re:ゼロから始める異世界生活　鬼がかりver．M08』（以下、『Reゼロ鬼がかり』とする）の登場以降、リリースされた新機種はどれも苦戦しているという状況が続いている。
なぜ、このような状況から抜け出せないのか分析を進めると、いくつかの問題が示唆された。そのひとつが「玉単価」である。これは、ゲーム性やスペック、および、勝ち体験などの是非を問う前の段階で問題となっていそうなことがわかった。
参考までに、以下に導入7日間の「玉単価」をまとめた。



『エヴァ15』、そして『Reゼロ鬼がかり』以降、リリースされた「ミドル」機種のほとんどが、玉単価2.0円を超える機種となる。『e仕置人』をはじめ、玉単価2.2円を超える機種に関しては、もはや「Aタイプ」並みの単価と言え、これではゲーム性や勝ち体験うんぬんの話にまでプレイヤーは辿り着かないと分析している。つまり、「自己のモノサシにふるいをかけるフィールドにすら上がらない」といった状況だ

その証拠に、プレイヤーの“遊びかた”を示すデータを分析すると顕著に表れた。当該機を遊技するプレイヤーの内、「60分以上遊技を行うプレイヤー」と「15分以内で遊技をやめるプレイヤー」に区分し、それぞれの集団の規模を分析すると明らかな結果として示された。以下に、「時間別属性遊技者割合」をまとめた。



玉単価2.0円付近の『エヴァ15』、そして『Reゼロ鬼がかり』を除いて、その他機種は「15分以内で遊技をやめるプレイヤー」の割合が、「60分以上遊技を行うプレイヤー」を超えている。つまり、“遊技機の魅力”に触れる前に、脱落してしまうプレイヤーが多く存在していると考えられる。

こうしたファクトに従うと、冒頭で述べたように「木」から掘り下げても市場受けする機種が生まれるとは考えにくい。また、「木」というスペックやゲーム性の話ばかりにベクトルを向けた遊技機選定からも導けるとは考えにくい。

「だってそもそも、“遊技機の魅力”を知る前に脱落しているユーザーがほとんどなのだから・・・」

このようにして“プレイヤーの使用文脈”に隠された「森」からインサイトを得ることにこそ、分析の役割と醍醐味があり、また、営業をスケールさせるためのヒントが隠されていると言えるのではないだろうか。

ここにきて内規改正の話があり、また遊技機スペックの話ばかりが先行しているように思えてならない。

とまれ、玉単価2.0円以下のパチンコ機が増えることを切に願っている。




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