CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2024-06-19
株式会社THINX代表取締役   𠮷元 一夢
パチンコ市場の回復に必要なのはLT機ではない!? ~ 置き去りされたユーザーの可能性 ~

統計士(データアナリスト)が魅せるデータでデザインする未来の姿「パチンコ市場の回復に必要なのはLT機ではない!? ~ 置き去りされたユーザーの可能性 ~」



最近のトピックスのひとつとして注目度が高いのは、やはり「ラッキートリガー搭載機種」(以下、「LT機」とする)の話題だろう。その中でもよく耳にする議論としては、射幸性を軸とした「LT機」のポテンシャルや、今後、「LT機」の市場は拡大をみせるのだろうか。という話題が多く聞こえてくる。

さて、こうした状況下において少し気がかりなことがある。それは、「アマデジ」や「ライトミドル」を嗜好する「ライトでマイルドな遊びを好む層」が置き去りにされている傾向が高いということ。

コロナショック以降、「ヘビーでジャンキーな遊びを好む層」の回帰率が高く、ユーザートレンドの矢印は、より射幸性の高いモノへとシフトしていった。それを受け、遊技機メーカー、ならびにホールもまた、より射幸性の高い遊技機にベットし戦略を走らせ続けた。当時の戦略を構想していく上では、市場ニーズに鑑みた正しい針路だったと言えるが、その結果は、「スロット市場は好調でパチンコ市場は苦戦」という状態となり現在に至る。

ともすれば、「LT機」の是非や「射幸性」の良否に問題があるというよりかは、「舵取りそのものに問題があるのかもしれない」という仮説や議論が生まれてもおかしくない気がしてくるので、本稿では、その辺りについてまとめることとする。

■ LT機の誤算?射幸性の影に隠れた真実、ライト層の力


パチンコ市場の回復に不可欠な層として考えているのが「ライトでマイルドな遊びを好む層」である。ようするに、「アマデジ」や「ライトミドル」を嗜好する層が増えない限り回復への兆しは見えにくいということ。

仮に「LT機」の市場が拡大したとしても「ヘビーでジャンキーな遊びを好む層」、すなわち、現在「ミドル」を嗜好する層が移行するだけで、そもそものパチンコ市場の回復に繋がらないと考えられるからだ。

実際に、ここ数年の「アマデジ」や「ライトミドル」を嗜好するユーザーの創出量は一定の規模で推移しており、「ミドル」トレンドや「LT機」の登場を受けても、30%程度の規模は存在している。以下に、「プレイヤー創出量」をまとめた。


図1:プレイヤー創出量 ©THINX-LAB.OLAP SIS ©SUNTAC「TRYSEM」よりデータ引用


これら集団は最近あまり注目されていない集団ではあるものの、実はパチンコ営業の構造の中においては活躍を高い見せている。その証拠に、「4円パチンコ」で稼ぎ出す粗利の内、直近でも40%近くを「アマデジ」「ライトミドル」の集団で稼ぎ出している。

つまり、客数のシェア争いなどの影響度としてはそこまで高くはないが、争いの中心に置くような機種を育成させるための原資をこれら集団で稼ぎ出している側面があるということが示唆されている。参考までに、以下に「粗利シェア」をまとめた。

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図2:粗利シェア ©THINX-LAB.OLAP SIS ©SUNTAC「TRYSEM」よりデータ引用


こうしたファクトから示唆されることは「蔑ろにはできない」ということなので、放置し続ける行為は危惧されるところである。どうしても投資の優先順位は後回しとなってしまうカテゴリだが、ここに着手できている店舗が商圏内の争いにおいては優位にコトを運べている状況が確認できる。この辺りもしっかりと分析を進め、勝ち筋を導き出していく必要があるだろう。

これらについては「今後の課題」というよりかは、「長期潮流における課題のひとつ」と考えおくべきだろう。参考になれば幸いである。

■THINX-LAB.


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このコラムを書いたのは
株式会社THINX代表取締役   𠮷元 一夢

𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役

データアナリスト・統計士
1986年生まれ。文部科学省認定統計士課程修了。
現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。
そのかたわら、2021年、会員制情報配信サイト「THINX-LAB.」をリリースし、知見やノウハウの提供を開始。2022年、業界紙「TRYSEM CROSS」を出版し、現在も刊行中である。

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