CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2023-09-28
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
障害者の採用や正社員等への転換を契機に利用できる助成金



皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回は、障害者の採用や正社員等に転換したことを契機に利用できる助成金を3つ紹介させていただきます。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)


概要


トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)は、障害者トライアル雇用(※)を利用した場合に活用できる助成金で、精神障害者を採用した場合は最大36万円、精神障害者以外の障害者を採用した場合は最大12万円を受給することができます。

※障害者トライアル雇用とは、障害者を継続雇用するきっかけづくりを目的とした制度で、原則3か月間の試行雇用を通じて、対象者の適性や能力の見極め、ミスマッチの回避等が可能です。

主な要件


  • 事前に障害者トライアル雇用求人をハローワークや職業紹介事業者等に提出し、その求人をもとに対象者を採用していること。
  • 対象者が次のいずれかに該当し、その対象者が障害者トライアル雇用による採用を希望していること。

    • 重度身体障害者
    • 重度知的障害者
    • 精神障害者
    • 紹介日時点で就労経験のない職業に就くことを希望している障害者
    • 紹介日の前日から過去2年以内に2回以上転職や離職を繰り返している障害者
    • 紹介日の前日時点で離職している期間が6か月を超えている障害者


支給対象となる障害者及び支給額




支給額の調整


本人の都合等により一定日数以上勤務を休んだ場合は、支給額が減額されることがあります(支給されないこともあります)。

支給対象期間と支給申請フロー


  • 障害者トライアル雇用開始日から2週間以内にハローワーク等に実施計画書を提出する必要があります。
  • 支給対象期間(障害者トライアル雇用の期間)が終了した日の翌日から2か月以内に申請する必要があります。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)


概要


障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換した場合に助成されるもので、より安定度の高い雇用形態への転換等を通じた障害者の職場定着を目的とした助成金です。

主な要件


  • 事前に障害者正社員化コースに関するキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けていること。
  • 転換日時点で次のいずれかに該当すること。

    • 身体障害者
    • 知的障害者
    • 精神障害者
    • 発達障害者
    • 難病患者
    • 高次脳機能障害と診断された者

  • 対象となる有期雇用労働者や無期雇用労働者は、賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者と異なる就業規則の適用を通算6か月以上受けて雇用されていること。
  • 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より減額させていないこと。


支給対象となる障害者及び支給額



カッコ内は大企業に対する支給額と支給対象期間

支給額の調整


支給額が、それぞれの支給対象期における労働に対する賃金の額を超える場合は、その賃金総額が支給上限額となります。

支給対象期間と支給申請フロー


  • 転換後の1年間が支給対象期間となっており、2期(6か月×2回)に分けて申請、受給する形となります。
  • 申請期限は、第1期が最初の6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内、第2期が次の6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内となります。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)


概要


障害者をハローワークや職業紹介事業者等からの職業紹介により、継続して雇用する労働者として採用する事業主に対して助成されもので、障害者の雇用機会の増大や雇用の安定を目的とした助成金です。なお、特定就職困難者コースは、障害者ではない「母子家庭の母」等も対象労働者となっていますが、本コラムでは障害者に限定して紹介します。

主な要件


  • ハローワーク又は職業紹介事業者等の紹介により対象者を採用していること。
  • 雇用保険の被保険者として採用し、継続して雇用することが確実であると認められること。
  • 次のいずれかに該当すること。

    • 身体障害者
    • 知的障害者
    • 精神障害者


支給対象となる障害者及び支給額



カッコ内は大企業に対する支給額と支給対象期間

支給額の調整


実労働時間が所定労働時間より著しく短い場合や、週当たりの賃金額が一定額を下回る場合は、支給額が減額されることがあります(支給されないこともあります)。また、支給額が、それぞれの支給対象期における労働に対する賃金の額を超える場合は、その賃金総額が支給上限額となります。

支給対象期間と支給申請フロー


  • 中小企業の場合、支給対象者に応じて、採用後の2年間又は3年間が支給対象期間となっており、4期又は6期に分けて申請、受給する形となります。
  • キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)と同様、1期は6か月で、原則第1期は採用日から起算した6か月になります。
  • 申請期限は、各期の末日の翌日から起算して2か月以内になります。

トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金、特定求職者雇用開発助成金は併用できる


各助成金の要件を満たしていれば、トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金、特定求職者雇用開発助成金は併用することができます。
例えば、中小企業において、障害者トライアル雇用を利用して精神障害者を6か月の有期雇用労働者として採用し、6か月経過後に正社員転換した後、以降、採用日から通算して3年継続雇用(※1)した場合は、トライアル雇用助成金で36万円、キャリアアップ助成金で60万円(※2)、特定求職者雇用開発助成金で200万円(※3)を受給することができます

※1障害者トライアル雇用を利用していた場合で、障害者トライアル雇用終了後に、継続して雇用することが確実である雇用形態に移行していたときは、当初採用日時点において継続して雇用することが確実であったとみなされます。

※2特定求職者雇用助成金の対象者を正社員転換する場合、転換前の雇用形態を無期雇用とみなすルールがあるため、対象者の転換前の雇用形態が有期雇用だったときは、受給額は120万円(有期→正規)ではなく60万円(無期→正規)となります。

※3トライアル雇用助成金を受給している場合、特定求職者雇用開発助成金の第1期分は受給できないルールになっているため、受給額は240万円ではなく200万円(第2期~第6期×40万円)となります。

今回は、障害者の採用等に関する助成金について書かせていただきました。
障害者の雇用をご検討されている場合は是非助成金の活用もご検討下さい。

このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。