CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2023-01-18
株式会社THINX代表取締役   𠮷元 一夢
嗜好や行動にマージさせる2023年

統計士(データアナリスト)が魅せるデータでデザインする未来の姿「嗜好や行動にマージさせる2023年」



はじめまして、株式会社THINXの𠮷元一夢(よしもと・ひとむ)と申します。今回から縁があって「CFYコラム」に寄稿させて頂くこととなりました。

私は普段、業界のビッグデータを独自の手法で分析し、ホール企業様や関連企業様に情報提供することを生業のひとつとさせて頂いています。本稿では主に、年末商戦のデータから示唆される課題や2023年の方向感などについて論じさせて頂ければと考えています。お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

※以下、読みやすさの観点から丁寧語、謙譲語を省いた表記とさせて頂きます。

60%が「ミドル」市場の時代


年末商戦に大きな期待を集めたのは、『Pゴジラ対エヴァンゲリオンG細胞覚醒L』(以下、『ゴジエヴァ』とする)や『スマスロ』だろう。いずれも、年末商戦に与えた影響はどれも“光明”であった。

たとえば『ゴジエヴァ』だが、個別機種評価の賛否はさて置き、データが示唆するものからは年末の大切な時期に「なくてはならない存在だった」と考えている。その理由は、「延べ遊技者をおおよそ9%創出できた」というデータに裏付けされている。

この数値は、「頭どり」データに基づいた数値ではなく、実際に遊技したプレイヤーの「延べ数」を基に集計しているため、「頭どり」のような定点観測による「点」の評価ではなく、「線」と「面」の評価となり実態に近い数値だと考えている。

わかりやすく言えば、仮に1,000人の「4円パチンコ」を遊技したプレイヤーがいた場合、おおよそ90人が『ゴジエヴァ』プレイヤーであることを意味している。販売台数や時期的なものとの兼ね合いもあるが、同機が示した9%は2021年から起算してリリースされた機種の中で“過去最大”の数値を記録した。同時期の『スマスロ』集団の「延べ遊技者割合」が5.3%であったことに鑑みれば、いかにインパクトがあったのか理解しやすいところだろう。

同時にその影響を受け「ミドル海」を除く「ミドル」集団の「延べ遊技者割合」もまた、それにともない“過去最大”を記録し59.6%となった。それだけに期待も高く、同機の吸引力は極めて高かったと評価した場合、個別機種評価とは別に、マーケティング視点においては「導入しないという選択肢はなかった」と考えられる。

高い射幸性による疲弊からの離反


先述の通り、「ミドル」の市場はすでに60%まで拡大を見せている。その反面で課題もある。それは、「高い射幸性による疲弊からの離反」である。たしかに、ユーザーの嗜好や行動にマージ(合併・融合)させた戦略に従い戦略を構想すればするほど然るべき事象なのかもしれない。ようするに、「ミドル」というボリュームゾーンを狙う戦略に舵をとる行為は至って自然な流れということだ。

しかし、忘れてはならないのは「射幸性」と「疲弊」の間にはトレードオフ(二律背反)の関係がある。わかりやすくいえば、「プレイヤーに強いる負担が高ければ高いほど、遊技機としての魅力は高まる」というような、「一方を選択すれば別の片方を失う」といった関係にあることだ。

ただし、これらはコントロールが効くと考えている。とくに「パチンコ」は、こうした課題を克服していかなければ、いくらレギュレーションが変わり魅力的な遊技機になるとされている『スマパチ』がローンチされたとしても、根本的な解決には至らないだろう。もちろん『スマスロ』も同じである。

2023年は、ユーザーの嗜好や行動にマージさせながらメンテナンス能力を高め、「遊びやすさ」を追求していくべき1年となるだろう。その上で「顧客データ」からプレイヤーの「勝敗管理」を行いながら、プレイヤーに強いる負担感の軽減を図る施策が重要となる。とくに、「勝ち率を上げる」というワードにはアンテナを張り巡らせ、意図的なコントロールが差を生む時代になると考えている。

躍進の年にしていただければと切に願っている。
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このコラムを書いたのは
株式会社THINX代表取締役   𠮷元 一夢

𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役

データアナリスト・統計士
1986年生まれ。文部科学省認定統計士課程修了。
現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。
そのかたわら、2021年、会員制情報配信サイト「THINX-LAB.」をリリースし、知見やノウハウの提供を開始。2022年、業界紙「TRYSEM CROSS」を出版し、現在も刊行中である。

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