CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-02-24
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
「キャリアアップ助成金」と「人材開発支援助成金」


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤拓也です。
さて、前回コラムでは助成金、利用要件について簡単にご説明させていただきましたが、今回は「キャリアアップ助成金」と「人材開発支援助成金」についてお話をさせていただきます。

本コラムでは各助成金の概要を分かりやすくご案内することを目的としているため、一部の要件しか掲載しておらず、また制度上の表記とは異なる表現をしている部分があります。本コラムの掲載内容だけをもって助成金の受給をお約束するものではありませんので実際にご利用される際は厚生労働省のサイト等で詳細をご確認下さい。

キャリアアップ助成金とは
前回少し触れましたが、「キャリアアップ助成金」は有期契約社員を正社員に転換すると57万円受給することができる助成金(正社員化コース)です。これだけ聞くと「有期契約社員として採用してすぐに正社員にすれば!」って考えられると思いますが残念ながらそうは問屋が卸しません。以下に概要、主な要件等をご説明させていただきますのでご参照ください。ちなみに有期契約社員とは「期間を定めて採用(契約)する社員」を指します。

■助成金概要
・有期契約社員を正社員に転換するという取組みに対して1人あたり57万円助成
・一年度あたり20人分まで申請可 等

■雇用区分に関する要件
・有期契約社員として6か月以上継続的に雇用したのち正社員に転換する
・正社員に転換したのち6か月継続的に雇用する
・有期契約社員としての採用時及び雇用中に正社員への転換を約束していない 等

■給与に関する要件
・「正社員転換前6か月間の給与合計」と「正社員転換後6か月間の給与合計」について転換前後で5%以上上昇している 等
※給与合計に含めるもの、含めないもの、賞与については別途ルールあり

■制度上の必要な手続き
・「キャリアアップ計画書計画届」を管轄ハローワークに提出し承認を受ける
・正社員への転換について社内で制度化し就業規則に規定する
・就業規則を管轄労働基準監督署に届け出る 等

■主な必要帳票
・「有期契約社員時の雇用契約書」及び「正社員時の雇用契約書」
・「勤務表(タイムカード等)」
・「賃金台帳(給与台帳、給与明細等)」 等
 ※いずれも支給申請時に添付が必要

「そこまで難しそうではない」とイメージいただけたのではないでしょうか。
個人的には「キャリアアップ助成金」はお勧めの助成金のひとつですが、その理由は「何か特別なことをしなくても良いから」です。もちろん有期契約社員を採用することや正社員に転換することは相応の経営判断が必要になりますが、フラットにみた場合でも「採用」や「人事評価に基づく昇格や昇給」は人を雇っている事業体では、程度の違いはあるものの当然にある動きだと考えられます。その当然の動きを通じ副産物として助成金を享受できるのは非常に効率的です。助成金の中には制度系と呼ばれる助成金があるのですが、ある制度を導入しその制度の「運用実績や効果」に対して助成することとなっており、それら助成金を取り扱う場合は、本業とは別に時間をかけて助成金の準備をする必要があるため簡単に対応できるものではありません。

人材開発支援助成金とは
「人材開発支援助成金」にもたくさんの種類がありまして、今回はその中の「有期実習型訓練(特別育成訓練コース)」をご紹介させていただきます。以下に概要、主な要件等をご説明させていただきますのでご参照ください。

■助成金概要
・有期契約社員に対する訓練(OFF-JTとOJT)に要した時間に対して助成
・OFF-JT、OJTともに 1時間あたり760円を助成(中小企業の場合)
・OFF-JTに要した経費(外部講師への謝金等)も助成(条件あり) 等

■訓練対象者に関する要件
・訓練分野において相応の経験等がない有期契約社員 等
 ※訓練分野=対象の有期契約社員が担うことになる業務

■訓練期間に関する要件
・実施期間が2か月以上6か月以下
・総訓練時間が6か月換算で425時間以上
・総訓練時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下(Off-JTは要20時間以上) 等

■制度上の主な必要手続き等
・ジョブカードアドバイザーと面談
・「訓練計画届」を管轄ハローワークに提出し承認を受ける
・「訓練計画届」では訓練カリキュラム、スケジュール等を設定
・訓練後は毎回、訓練日誌(所定様式)を手書き記入 等

■主な必要帳票
・「有期契約社員時の雇用契約書」
・「勤務表(タイムカード等)」
・「賃金台帳(給与台帳、給与明細等)」 等
 ※いずれも支給申請時に添付が必要

「キャリアアップ助成金」と比べたら準備すること、対応することは多くなりますのでやや手間はかかりますが、入社した社員に対して勤務中に仕事を教えること(=OJT)、社内外の研修等(=Off-JT)はどこの企業様でも少なからずある活動と思われます。この助成金に興味を持たれましたら、まず一度現在の新人教育に関する運用を文字に落としていただき、おおよその実績ベースで時間配分を確認してみてはいかがでしょうか。その結果、もし要件にマッチするようなら、さらにステージを上げて対応可能か否かを検討するというようなスタンスが初動段階ではより良いと考えられます。
なお、政策的に関係性があるという背景はあるのですが、有期契約社員中にこの助成金を活用したのち正社員へ転換すればキャリアアップ助成金も活用することができ、また、要件を満たすことによりキャリアアップ助成金の申請時において、OFF-JTに要した経費のさらなる追加助成を受けることができる仕組みとなっています。
「有期契約社員に対して訓練、教育を施してスキルアップを図り正社員へ転換する」という一連の流れにおいて多くの助成を享受できますので、既にキャリアアップ助成金をご活用されている方々、今後ご利用をご検討されている方々におかれましては、一度こちらの助成金のご活用も検討してみてはいかがでしょうか。

今回は2つの助成金をご紹介させていただきましたが、今後は他の助成金や社会保険、労働保険の時事などもお話しさせていただければと考えております。何かご要望のトピックがございましたら株式会社シー・エフ・ワイ様、または下記のホームページからご連絡下さい。
このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。