CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2023-07-12
株式会社THINX代表取締役   𠮷元 一夢
回遊分析の精度を高める~相関関係と因果関係の違い~

統計士(データアナリスト)が魅せるデータでデザインする未来の姿「回遊分析の精度を高める~相関関係と因果関係の違い~」



6月の市場規模(売上高)をビッグデータから読み解くと、20円パチスロは前年同月に比べプラス42%だったのに対し、4円ぱちんこはマイナス19%となった。元気の良いパチスロと元気のないぱちんこ、両者の差は広がる一方である。

さて、当面はパチスロを起点にぱちんこは守りを固めるという戦略構想が一般的な方向感になると思うが、本稿では、その際よく語られることがある「回遊性」について少し触れておくこととする。

見せかけの相関(疑似相関)


我々の業界ではよく、遊技機間のプレイヤーの動きから「回遊性が高い」、あるいは「回遊性が低い」などの表現を使うことがある。これはこれで正しい分析であるが、統計学術的な話をすれば因果関係を示したものではない。

統計学術を学ぶ上でよくある話として、「こうのとりの巣の数」と「赤ん坊の出生数」の話をご存じだろうか。

というのが、ヨーロッパのある街で数年間にわたって「こうのとりの巣の数」を調査し、毎年の「赤ん坊の出生数」との相関を調べたところ、両者の間には明らかに相関があることが認められた。

この事実から「赤ん坊はこうのとりが運んでくる」という説が裏付けられるという話になるのだが、この事実が正しくないのは当然である。

では、この事実をどう説明したらよいだろうか。

実はこの話には続きがある。

とあるヨーロッパの街は直近の数年間で第3の変数(z)となる、「町の大きさ」また「家の数」が増加していた。そして、その影響により軒先に作られた巣の数(x)が増え、同時に世帯数が増えたことにより必然的に出生数(y)が増えたのである。

つまり、xとzおよびyとzの因果関係によって見せかけの相関(=疑似相関)が表れたというのが答えとなる。


図1:見せかけの相関(疑似相関)


上図の例のように単純な場合ならば、xとyのデータに表れた相関から、直ちにxとyの因果関係に結びつける過ちはまずおかさないであろうが、実際当面する問題についてはこのような誤解がかなり見受けられるから十分気をつけなければならない。とくに時系列データの場合はこの種の誤りをおかすことが多い。

さて、本題はここからになる。

我々の業界でも似たようなことが往々にして起きている。
例えば、次の例もよく聞く話だ。


図2:「スマスロ」と「ミドル」の見せかけの相関(疑似相関)


従来、「ミドル」を遊技していたプレイヤーが「スマスロ」へ回遊している。だから、「ミドル」プレイヤーの回遊先を「スマスロ」へ・・・などの話は、よく耳にするし、一度は考えたことがあるだろう。

これはこれで正しいのだが、本質的な因果論理を文脈として語ったものではない。

ようするに、第3の変数となるzが何を示すのかをうやむやにしている状態で、回遊を促す要因は解明されていないまま、なんとなく営業を組み立てている。
我々の業界ではzを分析しないのが一般的で、「回遊性」という都合の良い言葉を使い片づけているのがほとんどである。

つまり、事実の整理整頓だけを行い、なんとなく傾向を掴み分析したような気になって終わってしまっているということだ。

冒頭の話に戻るが、元気のないぱちんこの営業を勘案していく上では、パチスロとの「回遊性」を高めていくことが重要な意味を持つと考えている。今回ご紹介したような視点が何かのヒントになれば幸いである。

図2、第3の変数zが気になる方はTHINX-LAB.REPORT(https://www.thinx-lab.com/guide/price)をご覧ください。

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このコラムを書いたのは
株式会社THINX代表取締役   𠮷元 一夢

𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役

データアナリスト・統計士
1986年生まれ。文部科学省認定統計士課程修了。
現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。
そのかたわら、2021年、会員制情報配信サイト「THINX-LAB.」をリリースし、知見やノウハウの提供を開始。2022年、業界紙「TRYSEM CROSS」を出版し、現在も刊行中である。

THINX inc.
URL:https://www.thin-x.co.jp/

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