CFY COLUMN
シー・エフ・ワイ コラム
2021-05-26
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也
労務管理Q&A①


皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。
今回のコラムでは労務管理のトピックスをQ&A形式でご案内させていただきたいと思います。

Q
俳優、ダンサー、アニメ制作等のフリーランスも労災保険に加入できるって本当?
A
はい、令和3年4月1日から加入できるようになりました。

本来労災保険は、会社(個人事業含む)に勤務しているいわゆる労働者がその加入対象となりますが、一方で従前より、一定の要件を満たした「中小企業の役員」や「個人タクシードライバー、大工等の個人事業主」も「特別加入」と呼ばれる制度を利用することによって労災保険に加入することができていました。

今般、その「特別加入」の改正がありまして、令和3年4月1日から「特別加入」の対象者として次のような方々が追加となりました(一部対象者省略)。

■芸能関係作業従事者


1.芸能実演家
・俳優(舞台・映像メディア俳優、声優等)、舞踊家(日本舞踊、ダンサー等)、音楽家(歌手、作詞家、作曲家等)、演芸家(落語家、DJ等)、スタント 等

2.芸能製作作業従事者
・監督、撮影、照明、音響、衣装、メイク、アシスタント、マネジメント 等

■アニメーション制作作業従事者


・キャラクターデザイナー、作画、絵コンテ、原画、監督、演出家、脚本家、編集 等

対象者拡大の背景としては、多様な働き方が広まる中、芸能やアニメーション業界における個人事業主やフリーランスについては、業務・作業工程において労働者的な要素を有する部分があるといったような判断がなされたと思料され、関係者の保護を厚くする意図があったと考えられます。
なお、芸能関係作業従事者やアニメーション制作作業従事者が「特別加入」を利用して労災保険に加入する場合は、特別加入団体と呼ばれる団体を経由して手続きをする必要があります。

労災保険料については全額自己負担(通常の労災保険は全額会社負担)となりますが、年間保険料は3,831円~27,375円(令和3年4月1日時点)の範囲内(※)であり、この保険料で、「業務災害に係る病院代の全額補償」、「業務災害を理由とした休業に対する休業補償(現金支給)」等が付保されますので、相当数加入があるものと推測されます。

※年間保険料は自身の収入等を踏まえ任意に選択する仕組み


Q
法律的に副業って問題ない?
A
問題ありません。法律でも禁止されていません(ただし、公務員は原則禁止)。

法律的には問題ありませんが、通常は会社のルールとして「禁止」や「許可制」、「同業での副業はNG」等の一定の規制を設けていることがほとんどと思われますので、より正確な回答としては「法律的には問題ないが会社のルール次第」となります。なお、会社でルールを作り、運用する場合は就業規則への規定が必要となりますが、副業に関しては服務規律や懲戒のチャプターに関連条文を規定することが一般的です。

ところで、設問のとおり「法律的に副業はNG」と認識されている方はかなり多くいらっしゃる印象があります。おそらくその理由として、「会社にそのようなルールがあるから」、「就業規則に書いてあるから」のような見解を有している方が多いためと考えられます。

厚生労働省は、事業者が自社で利用することを想定した「モデル就業規則」というものを公表しているのですが、以前はそこに「副業NG」の条文があったものの、現在公表されている「モデル就業規則」には「副業NG」の条文はなくなっています。昨今は働き方改革の一環として国が副業や兼業を強く促進しており、それを契機にその条文は削除されました(現行モデルは「副業ありき」になっています)。

仮に、従前の「モデル就業規則」をベースに自社の就業規則を作成し、以後、改定や更新をせずに現在も運用している場合は「副業NG」の条文が残っている可能性があり、その存在によって「法律的に副業はNG」といった思い込みに繋がっていることも想定されますので、今一度見直しをされてみてはいかがでしょうか。


Q
「会社の社会保険」と「市区町村の国民健康保険」、どちらに加入するか選択できる?
A
任意のタイミングや判断で選択することはできません(ただし、あらかじめ加入条件を意識した労働契約を締結することにより、結果的に加入先を選択することは可能)。

詳細な加入条件は省略しますが、「会社の社会保険(以下「社会保険」)」の場合、アルバイトやパートを含む従業員については一定以上の「所定労働時間」が加入条件となっていますので、この「所定労働時間」が加入条件を満たしているときは(他の加入条件も満たしていると仮定)、強制的に社会保険へ加入しなければなりません。

ここに加入希望の有無は関係なく、「加入条件を満たしているけど加入したくない」、反対に「加入条件は満たしていないけど加入したい」のような選択の余地はありません。一方、国民健康保険の加入条件については、「所定労働時間(当たり前ですが)」、「年収」等の条件はなく、シンプルに社会保険に加入していない(できない)場合に加入することとなります。

なお、社会保険の場合、被保険者(従業員)の家族については見込年間収入が130万円未満(他の要件は満たしていると仮定)のときは被扶養者に該当します。この被扶養者の加入についても選択の余地はなく、やはり、当人の労働条件や年収によって加入先(加入方法)が決まります。

例えば、被扶養者であるパート勤務の妻の労働条件や年収に変化があったと仮定して、「(見込年間収入130万円未満・以上に関係なく)パート勤務先で社会保険の加入条件を満たしたときはその勤務先で社会保険へ加入する」こととなり、また、「パート勤務先では社会保険の加入条件は満たしていないものの見込年間収入が130万円以上となったときは自身で国民健康保険へ加入する」こととなります。

今回のコラムはいかがだったでしょうか。「理解が深まった」、「参考になった」等、思っていただけましたら幸いです。
次回コラムは「労務管理Q&A②」を予定しておりますので、よろしくお願い致します。
このコラムを書いたのは
社会保険労務士 齊藤労務事務所   齊藤 拓也

千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。